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Friday Column

No.211

『モスクワでの3つのエイム』

さて、すっかり旅行記づいている『金曜コラム』。そんな流れにぶちまかせて今週はロシアの首都・モスクワです。今回7年ぶり4度目のモスクワには、4月のトルクメニスタン旅行の経由地として往路復路で計3泊しました。私が初めてモスクワを訪れたのは98年夏。当時はまだ社会主義の雰囲気が濃く残り、人々はみな硬い表情をした、暗いイメージの街でしたが、01年、02年と訪れるたびにだんだん街の光量があがっていくのがよくわかりました。今回は7年ぶりですから、北京や上海のようにもうすっかりピッカピカの大都会になっているんだろうと思っていましたが、行ってみると、人々が少し笑顔を見せるようになった程度で、街自体の印象はさほど変わりなく、旅行者の私はほっとしました。


トヴェルスカヤ大通り

モスクワは楽しいですよ。最も好きな街のひとつです。なんつたってあのキリル文字が魅力です。あの不思議な文字を見るだけで、なんだかすごく遠い国にやって来たんだなぁ、という旅情がぶりぶり盛り上がります。中心部のホテルや高級レストランくらいでしか英語が通じないってのもいいですね。街をちょっと離れるとOneもTwoの通用しなくなるのがたまりません。なんやかんやで5度目のロシア、4度目のモスクワですから、キリル文字の解読はなんとかできるようになりました。それ読めないと、駅名すらわかりませんからね。しかし、ちゃんとロシア語を勉強しないままなので、まだまだ数少ない単語を投げつけるだけの【Club Tango】の状態ですが、それでも、大国の首都ですから、都会ですから結構不自由なく街を歩けます。


キリル文字を見るとワクワクする

そんなモスクワでの私の今回の目的は3つ。まず、いつかそのうち出すであろう次なるアルバムのジャケット写真を撮ること。そして【モスクワ大学】のオフィシャルTシャツを買うこと。もうひとつは【STEFF】のホットドッグを食うこと。今週はモスクワでのこれら3つの目的について書いていきます。

◆アルバムの “表1”写真を撮る
今後いつか発売するであろう次なるアルバムのための“ジャケット表1写真”を自らセルフ撮影するのです。ということは、すでにアルバムタイトルはなんとなく考えているのです。先に言っときますと“表1”とは、アルバムのブックレット製作を進める上での業務用語で、インナーブックレットの表紙が“表1”=ジャケットです。で、ブックレットを開いた表紙の裏面が“表2”。そのあとから1ページ・2ページと数えて、ブックレットの最終ページが“表3”で、いわゆる裏表紙が“表4”というわけです。私の写真趣味は91年頃から始まり、基本的には旧【北青山イメージ開発】の会報用にと、三脚セルフタイマーで自分込みの写真を撮っていたんですが、94年に高級コンパクトカメラ【CONTAX T-VS】を買ったあたりから、だんだん楽しくなり、そのカメラをもうかれこれ15年間使い続けて現在にイタルタス通信。

98年、初めてやってきたモスクワ【赤の広場】で、その荘厳な景観に感銘を受け、「よし、ここで次のアルバムのジャケ写を自ら撮ってやる」といろいろやってはみたんですが、結局、これだ!という“表1写真”は撮れませんでした。私がモスクワとサンクト・ペテルブルグで撮った写真群は、翌99年に発表したロックなアルバム【KREMLINMAN】のインナーブックレットに、あくまで素材として使われたにとどまりました。

01年発表の【Gleam & Squeeze】では、今度こそと中国・北京で撮影した写真が見事“表1”に採用されます。というよりはがんばって意見を押し通した、と言ったほうが正しいでしょう。このアルバムのブックレットはすべて中国(北京・上海・ハルピン)で撮影したもので構成しました。06年の【遥かなるまわり道の向こうで】は、すべてパリ在住時の写真で構成。しかし、正確には“表1”は愛妻が撮影したものです。一昨年のベスト盤【IDEAS】と去年の【LIVE ばったり7】の“表1”はいずれも写真家・大川直人さんによるものです。

さぁ、次のアルバムの“表1”は再び私の出番です。と、曲もできてないうちから勝手に決めつけて、私はここモスクワにやってきたのです。ってことで、やはりまずは【赤の広場】に向かいます。

トルクメニスタンからの復路経由時の4月16日(木)の午前中。【Hotel Sovietsky】の前の銀行で両替して、バスに乗って地下鉄に乗って、【赤の広場】に着きました。今回はちょっとしたイメージ目標があります。ビリー・ジョエルさんが87年に出したロシアでのライブ盤『KONZERT』(SRCS -9545のほう)のパッケージ裏面に、雨の【赤の広場】で【聖ワシリー寺院】をバックに撮った写真があって、あの感じのやつを撮りたいのです。うまい具合に雨が降ってましたので、ホテルで借りた傘をさして、三脚立てて撮りました。帰国後、現像されたポジ・フィルムを見てみましたが、どうでしょう・・・。まぁ、狙った感じの写真になるにはなってるんですが、うぅぅん、ジャケット表1じゃないなぁ。うまくいって表4どまりかなぁ、という雰囲気です。しかしまだ“表1”を断念したわけではないので、それらの写真はここでは掲載せず、普通のスナップを1枚。いつかそのアルバムが出るのを楽しみにしてください。その前に曲つくんないとアルバムなんて出ないんだぞ、ということは私がいちばんよくわかっています。曲はそこそこあるんだけど、問題は歌詞なんだよなぁ、歌詞、ってことはコレをお読みの皆さまのほうがよくわかっていると思います。


クラスナヤ・プロシャチ(赤の広場)

◆モスクワ大学に入りたい!
次は、これは他のどの国・どの都市に行っても共通の目的である“大学オフィシャルTシャツ”購入。なにをかくそうなんにもかくしてない私は“大学オフィシャルTシャツ収集”というカッコイイ趣味がありまして。もう結構いろんなとこの持ってます。最初は旅行のおみやげとして買って帰ってました。旅行のおみやげって難しいじゃないですか。空港で買おうとすると、なんかどこの国も似たようなニュアンスですし、かといっておみやげ買うのに必要以上に時間とられたくないですし、とそんなとこからいろいろ考えていくうちに「安価」「かさばらない」「もらって困らない」「そこに行かなければ手に入らない」「そこに行くこと自体も結構おもしろい」、そんな複数の条件をすべて満たそうとしたところ“大学オフィシャルTシャツ”に行き着いたというわけです。

中国の『北京大学』、イタリアの『フィレンツェ芸術大学』、ポーランドの『ワルシャワ大学』、ベルリンの『フンボルト大学』などいろいろある中、リトアニアの『ヴィルニュス大学』なんかはかなりレアですよ。『モスクワ大学』には98年に行ってTシャツを買い、おみやげで友人数人にあげましたが、1枚だけは今でも大事にとってあります。もちろん、中国の『広州大学』や『ハルピン大学』、スロバキアの『コメンスキー大学』、クロアチアの『ザグレブ大学』、ウラジオストックの『極東大学』など、行ったはいいがオフィシャルTシャツなど存在しなかったところもありますし、ウクライナの『キエフ大学』は警備員に止められ校内に入れませんでした。しかし、それはそれで毎回いろんなドラマや出会いがあり、観光スポットを観て歩くよりは格段におもしろいのです。

そして4月17日(金)、晴れました。ホテルの前からバスに乗って、地下鉄乗り次いで【ウニヴェルシチュート】=“大学”という駅に着きました。地上に出ると目の前は大学の敷地ですが、正門までは距離があります。1kmほど歩いて、98年以来11年ぶり2度目の【モスクワ大学】に到着しました。本館はスターリン様式のカッコイイ建物。ロシア最高学府としての威厳に満ち溢れた荘厳なルックスです。ここでも押さえで表1目標写真を撮っておきます。3脚を立ててポーズをとる私の近くで女の子が2人、写真を撮りっこしています。2人ともかわいかったので「ドーブリ・ジェン/こんにちは」とロシア語で声をかけて、「写真、とりましょうか」と英語で話しかけてみました。アンナちゃんは高校生で、今度この【モスクワ大学】を受験するそうです。そのための講習会か模擬試験かなんかがあったんでしょう。もうひとりのナスチャちゃんはお姉さんでしょうか、少し年上のようです。アンナちゃんは高校生らしい英語で「Why do you come here ? What is your aim ?」と言います。“aim”って単語がなんか懐かしいです。「あなたみたいなおじちゃんが、なんでこんなとこに来たんですか?」ってことでしょうけど、そりゃそうですね、どこからどうみたって受験生にも留学生にも見えないでしょうから。「私はいろいろな国の大学のTシャツを集めています。それでモスクワ大学のTシャツを買いに来ました」と日本人らしい英語で答えると、「Oh, Collection」と意味が通じたようで良かったです。ナスチャちゃんがロシア語で何か話してきましたが、まったくわからなかったので「ニェ・ポニョ/わかりません」と言いました。そう、「ポニョ」ってロシア語で「わかる/理解する」という意味なんです。綴りを見ると正確には違うんですが、そう聞こえますし、そう言うと通じました。「ポ〜ニョ、ポーニョ、ポニョ、魚の子」は、その辺となんか関連があるんでしょうか。ま、そんな感じでモスクワ大学の本館をバックに記念撮影。


アンナちゃんとナスチャちゃんと日本のおじちゃん

で、肝心の“モスクワ大学オフィシャルTシャツ”。本館の重厚なドアを開けて、あくまで「私は留学生」というイメージでゲートを通過しようとしましたが、ガタイのいい警備員に止められて学生証提示を求められ、そんなもん持ってるわけありません。しらばっくれてパスポートを見せようとしましたが「ニェット(NO)」と言われました。なんとかして意志を伝えようとしますが、なんか言おうとした瞬間に「ニェット」と言うもんですから、粘ることもできずに仕方なくあきらめました。

わかってはいたんです、警備員がいて学生証がないと入れないことくらい。98年の時は、本館のゲートにたまたま警備員がいなかったので「今だ!」と通過して、見事に売店を探しあてTシャツを購入。今回も入れるかどうかは来てみないとわかんなかったですし、変にゲートの様子をうかがったりしてると、かえって怪しい“気”がでてしまうと思い、あくまで「私は留学生」のイメージで、サラッと通過しようと試みたんですが、あっさりゲキチンしてしまいました。まぁ、仕方ありません。98年に買ったオフィシャルTシャツの価値観が、逆にあがったんだと考えることにします。くやしいので学生用のワンボックスのミニバスに乗って駅まで戻りました。


また来るからな、待ってろよ、モスクワ大学!

◆【STEFF】のホットドッグを食う
さて、もうひとつの目的は【STEFF】のホットドッグを食う、これは簡単です。そう、ただ通りにあるホットドッグスタンドのチェーンなんですけど、これがウマい。私もかなりのホットドッグ好きでユーロッパを中心に各国で食べてきましたが、93年にカリフォルニア州のアナハイムスタジアムで食べたホットドッグ、03年にドイツ・ベルリンで食べた“カリー・ヴルスト”と並んでのベスト3が、モスクワの【STEFF】の「Datsky Hot Dog」です。で、あっさりそれは食えました。

4月16日(木)、雨の【赤の広場】で写真を撮った後、最近カフェが多くできて若者が集うとガイドブックに書いてあった、ボリショイ劇場の裏手のカメルゲルスキー通りに行ってみました。しばらく歩くと【STEFF】に似た造りのホットドッグスタンドがあり、しかしそれは【STEFF】ではなく、【Stardog!s】と書いてあります。近づいてメニューを見ると【STEFF】と同じ内容でした。あとで調べると、2002年に名前が変わったみたいです。で「ダイツェ・ムニェ・アジン・ダツキー・パジャールスタ/ダツキーをひとつください」とロシア語で言うと、「バリショイ? ミェルキ?」と聞かれたので、「ん?」という顔をすると「大きいの? 小さいの?」とジェスチャーしてくれて意味が分かり、「二ェ・バリショイ/大きくない」となぜか変にまわりくどく答えました。7年前の【STEFF】時代は、ダツキーに大小はありませんでしたが、【Stardog!s】になってレベルアップしたのでしょう。

“ダツキー”とは、グリルしたソーセージをパンに挟んでケチャップとマスタード、とここまでは普通のホットドッグなんですが、その上にピクルスの薄切りが数枚と、ドライ・フライド・オニオンのフレークがのります。コレがいいんですよ、めちゃくちゃウマいです。後で“ダツキー”という語を辞書で調べてみると「デンマークの」という意味でした。ちなみに、“ホット・ドッグ”はロシア語でも“ホット・ドッグ”です。


なんなく“Stardog!s”を発見
 

これがダツキー・ホット・ドッグだ

4月17日(金)、モスクワ大学で門前払いをくらい、その後アルバート通りで昼メシを食べてホテルに戻ってひと休み。もう地下鉄にもバスにも乗り馴れちゃったし、午後はワンステージアップの意味で【ロシア国鉄】にチャレンジすることにしました。地図を見ながら地下鉄駅と国鉄駅が交差する『FILI/フィリ』駅まで地下鉄で行き、帰りに国鉄で『BELORUSKY/ベラススキー』駅に戻るというシンプルなプランを立てて、『FILI』駅にやってきました。


これで“FILI”と読むのだ

環状道路からちょっとだけ外れたところですが、中心部とは違ってどことなく地元感がありウキウキします。すると、お、またありました【Stardog!s】。ここは移動式スタンドではなく、小さいカウンターのある固定店舗型。見つけちゃった以上食べましょう、量的にもおやつ感覚ですし。店に入り、私の数少ない慣用文「ダイツェ・ムニェ・アジン・ダツキー・パジャールスタ/ダツキーをひとつください」と言ってみると、昨日と同じように「バリショイ? ミェルキ?」と言ってきたので、今度はすかさず「ミェルキ/小さいの」と答えました。ロシア語がスムーズに1往復したのでちょっとうれすぃ〜、と良い気分になり、手渡された“ダツキー”をほおばろうとする写真を自分で撮ったりしていたら、店のマダムがなにやら話しかけてきました。

「〜〜をください」程度がやっと言えるようになっただけで、ロシア語をしゃべられてもまったく意味がわかりませんよ。しかしマダムは身振り手振りを交えながらいろいろと話しかけてきます。そのジェスチャーからしてどうやら「写真撮ってあげましょうか」的なことだと解釈できます。それがもし日本語だったら「いえいえ、自分で撮るのが好きなんで、どうも」と言うところですが、そんな高度なロシア語をしゃべれるわけもなく、せっかくのロシア人とのコミュニケイション・チャンスなのでカメラを渡して撮ってもらいました。


ホットドッグを持ってテレる日本人

その後もジェスチャー&単語投げつけコミュニケイションが続きます。すべてジェスチャーから読みとるしかありませんが、「私は○○○。あなたの名前は?」みたいなことを言っているようなので、そのくらいはオレだって言えるぞと「ミニャ・ザヴート・カン/私の名前はカンです」と言ってみたら通じたようです。そのあともすべてジェスチャー読みとりですが「日本人が、なぜ、ここフィリに来て、なぜ、スタードッグスに来たの?」と言っているであろう問いに対して「ヤー(私)、ミェトロ(地下鉄)、スタンツェ・フィリ(フィリ駅)、スタードッグス(スタードッグス)、オ〜ゥ・ワオ(見つけてビックリのジェスチャー)、オーチン・フクースノ(とてもおいしい)」と大きなジェスチャーで単語を並べてなんとか伝えようとします。これぞ【世界カタコト協会】の予備段階【Club Tango】の重要な交流活動です。そんな感じでダツキーを食べながら10分くらいでしょうか、楽しくコミュニケイションして、最後に「モージナ・ファタグラフィーラバツ?/写真を撮ってもいいですか?」と聞くと、「私? えぇ〜、ヤダ〜」みたいな感じで、しかしスッとメガネをはずしてカメラを見てくれました。店を出る時に「スパシーバ、ダスヴィダーニャ/ありがとう、さようなら」と言うと、「日本語では?」的なことを言ったので「さようなら」と言ったら、「サヨーナーラ」と手を振ってくれました。


フィリのStardog!sのマダム

ね、楽しそうでしょう、モスクワ。3つの目的の1つ目“ジャケット表1写真”がうまくいったのかどうかはこれから考えます。2つ目の“モスクワ大学のTシャツ”は失敗に終わりましたが、3つ目の“STEFFのホットドッグ”は店名は変わっていたものの予想外に展開しながら楽しく達成しました。『フィリ』から国鉄の各駅停車に乗って3駅、『ベラルスキー』に戻ってきました。夜はチャイコフスキー記念コンサートホールでロシア国立交響楽団のコンサート鑑賞などしてみたりして、肉食ってワイン飲んでモスクワ最後の夜はふけました。


マヤコフスカヤにある
 

チャイコフスキー記念コンサートホール

はい、結局けっこうな長さになりましたが、今週はこれでおしまい。この5週間は書きに書きまくった『金曜コラム』、おつきあいいただきありがとうございました。来週からは久しぶりに“書くことない”状態がときどきあるような気もしますが、まぁ、テキトーにおつきあいください。

と、そんなこといってる間に発表になりました【弾き語りばったり #11 〜言った、言わない〜】。本物のアーティスト風シリーズも回を重ねて第6弾の“#11”。素数展開がそろそろいい感じでその効果を出し始めました。どうあれ、早め早めに準備・練習・調整していこうと思っていますので、やんわり御期待ください。

そして明日30日は大阪城ホールでのFM802のイベント【RADIO MAGIC】に出演します。ちょっとしたコラボレイションなんかもあったりして。お楽しみに。

では、最後に久しぶりにクイズです。
問題:
カメルゲルスキー通りのオシャレなカフェの窓に、皆さんも御存知の3つの料理がキリル文字で書かれています。その料理とは何と何と何でしょう。

ヒント:
このページ上から6枚目の写真は【Stardog!s】、8枚目は【FILI】と読みます。ちなみにロシア料理ではありません。


正解は来週の『金曜コラム』で

2009/05/29



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