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Friday Column

No.030

『平和の使者のその前に』

1980年12月9日の学校帰り、大学受験を控えた高校3年の私は、中学時代にザ・ビートルズのコピーバンド「ザ・ミートルズ」を組んでいた山城辰也と一緒に、近所のお好み焼き屋『ひらの』でいつものように焼きそばかなにかを食べていました。店内の壁の隅の高い所に三角形の板がありその上にテレビがのっています。いつものように右手の箸で焼きそばを掴み皿上数センチに上げたまま、左手でマンガ本をめくり、時々半笑いしながらやっと食べる山城を見て、出来たての熱いところをしゃっしゃか食べるほうが絶対うまいのに、と思いながら「ねぇ、それおもしろい?」「うん」「ふ〜ん、で、焼きそばは、旨い?」「うん。・・なんで?」、とそんないつもの感じの夕方6時のTNC(フジテレビ系)のニュース番組トップ、俵孝太郎(たわら こうたろう)さんはおきまりの「こんばんは!俵孝太郎です!」の後、高揚した口調で「元ビートルズのジョン・レノンさんが射殺されましたぁ!」。私と山城は「うそぉっ!・・」と顔を見合わせ一瞬固まり、直後画面をみると、おそらく新聞記事の白黒写真のオノ・ヨ−コさんが映っていました。そこまでは今でもハッキリ覚えていますが、そのあとどうしたかは覚えてません。たぶん、焼きそばをさっさと食べて、家に帰ってニュース番組をあちこち探して見てまわったのでしょう。今思えば、人の死になにかわからないけどひどく大きなショックを受けた初めての経験だったような気がします。

今年で没後25年。これまで絶えずどこかしらでその音楽が流れ、最近では「ジブラルタ生命」「富士フィルム」などのCMに写真が登場するジョン・レノンの存在感は、かげりをみせないどころか年々その人間像は神格化され、今となっては『ジョン・レノン=イマジン=反戦・平和の使者』みたいなことになっちゃってるこの傾向、日本だけではなくフランスでもなにか似たものを感じたことがあります。去年だったでしょうか、イラクへの自衛隊派遣が決まった時、国会議事堂前での反対デモがニュースで流れてました。いろんな人にいろんな考え方があるでしょうし、それを行動にうつすのは素晴らしいことだと思いますが、ここでジョン・レノンの『イマジン』を流しながら行進するのは、うぅ〜ん、どうなんでしょう・・、そういうもんなのかなぁ〜。なにかその音楽性とは全く関係なさそうなジョン・レノン解釈みたいなことに違和感を感じてました。普通以上にその音楽を聴いているビートルズファン、ジョン・レノンファンが同じ映像を見たら少なからず私と同じ感覚をおぼえたことでしょう。

というわけで昨日12月8日(日本時間では9日)はジョン・レノンさんの命日。だから私はこれを書いているわけですが、何が言いたいのかというと、別に、いいんですよ、『ジョン・レノン=平和の使者』でも。今の世界に必要で重要な存在です。でもね、せっかくなので毎年おとずれるこの機会にジョン・レノンの音楽をもっといろいろと聴いてみてはいかがですか、と、ボジョレ・ヌーヴォ−をすすめるのと同じくらいの言い方ですが、そういう気持ちです。とかなんとかいっちゃってる私だって、ビートルズ以降のソロ作品は全てバッチリ聴き倒してるわけではないんですが、なんというかこう、“平和の使者”である以前に、20世紀に革新的な作品を多く作り、それ以降の音楽に絶大な影響を与え続けている音楽家としてのジョン・レノン像というか、そのようなものを音楽家としてちゃんと継承するというか、私もそんな使命を担っているひとりであると勝手に思っているわけですから、そんな気持ちです。なんだか勢いがないわりにやや説教っぽい書き方になりましたが、まぁ、いいじゃないですか、音楽家のサイトなんですからね。「ケタワリカン」とか「オレンジンジャー」も納得度はかなり高いんですが、たまにはこういう話もね。

今回のこの文章はあくまでジョン・レノンをあまり知らない人をイメージ対象にして書いているわけですから、ここで具体的に“何を聴くか”を提示するべきなんですが、さて、どのへんをお勧めしますかねぇ。やはり私はリッケンバッカーを胸の位置で持って上半身全体でリズムをとるスタイルのビートルズ初期から日本武道館にやって来るくらいまでのジョン・レノンが特に大好きなもんですから、そんな中でもポール・マッカートニ−との才能のぶつかり合い競い合い、また両者の作品のコントラストが実におもしろい、という意味で、アルバム『REVOLVER/リボルバー』(66年作品)なんかどうでしょう。「I’m Only Sleeping」のグッタリ感はジョン・レノンのイメージ範囲内でしょうが、「And Your Bird Can Sing」の明るいビート感は意外なのかもしれません。「She Said She Said」や「Tomorrow Never Knows」は今聴いても、20世紀中盤に誕生したのロック音楽におけるなにかしらの小さな破れ目のような気がします。CDになってますから、是非どうぞ。日本語盤の解説文を読みながら聴くと更におもしろいと思います。何も考えなくて聴いてもいい曲ばっかりです。なんつたってザ・ビートルズですからね。

※STVラジオ『KANのロックボンソワ』第59回では、そんなジョン・レノンさんの音楽・
   精神を忠実に継承している作品を特集しました。っつっても3曲だけですけど。御興味があれば合わせてお読み下さい。
   http://www.stv.ne.jp/radio/kan/

若き日のジョン(写真はイメージです)
2005/12/09


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