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Friday Column

No.029

『ケタワリカンという発想』

さぁ、今回は新提案、それも社会に向けての提案です。

お勘定を各人に平均に割り当てて支払う“ワリカン”、これ数理にかなったたいへん平和的な支払方法として友人同士の飲み会・食事会では定番ですね。そんな“平和的ワリカン”を成立させるためには「同年代または同級生である」「目に見えて大きな経済的格差がない」「人間離れした大量の飲み食いをする者が含まれない」などの条件を満たす必要かあります。でもこれは“友人同士”であれば普通そうである、あまり考えなくてもいい条件でしょう。

私がパリに住んでいた時は若干違うケースがありました。例えば、よく一緒に飲み食いしていた3人。私(40代前半)、友人A男(30代前半、大手日本企業のパリ支店に勤務)、友人B男(20代後半、貯金をはたいて渡仏した学生。アルバイトはあるが学生ビザのため就労時間が短く制限されている)といったいろいろな条件に差異はあるものの、関係としてはあくまで語学学校から派生した“友人同士”。この3人でレストランに行き、飲み食いする場合、友人とはいえ世代の違うものどうしの“ワリカン”は決して平和的ではないと判断した私、最初はなんとなくかっこつけて全額払ったりしてたんですが、それが複数回くりかえされると、時に友人A男が「今日はぼくが・・」と払おうとします。しかし40代の私が30代の友人におごってもらうのもちょっと違う。とはいえ毎回私がおごっていたのでは、私は食事の度に3人分の料金を払うことになり、それは決してステキなことではない。しかも、どっちみちおごられっぱなしの友人B男はかえってこの食事会に参加するのに気がひけてくる。

こんな状況で私があみだしたのが、これまでにない全く新しいワリカン方法が『ケタワリカン』です。割り方は簡単、金額を人数で割るのではなく、“桁”で区切ればいいんです。上のケース、例えばレストランでの会計金額を「168ユーロ」とした場合、年長者である40代の私が「百の桁・100ユーロ=約14,000円」、大手企業勤務・30代の友人A男が「十の桁・60ユーロ=約8,400円」、20代の苦学生・友人B男は「一の桁・8ユーロ=約1,120円」を支払う、これが『ケタワリカン』です。年代や経済力に応じた適度な“おごりおごられ感”がのこり、また、まるっきり御馳走になって「ごちそうさまでした」と頭下げっぱなし、というひとはひとりもいない、という情緒に満ちていながらもどこか合理的なワリカン方法=『ケタワリカン』。

日本のサラリーマンを想定してこの『ケタワリカン』をシミュレートしてみたらどうでしょう。ある企業の「課長・40代・妻に子供2人」「係長・30代・既婚子供なし」「役職無し・20代・独身」「新人OL・20代独身」の4人があるひとくぎりのお疲れ会でこじゃれた居酒屋に行きました。構成員からいって支払いはどう考えても当然「課長」のおごりです。しかし考えてみてください、最初っからおごってもらうとわかり切っているこの飲み会、「係長」は「課長」の話に内容はどうあれいちいち「私も同じことを考えてました!」と同調しするだけのイエスマンになりさがり、話題にうまくついていけてない「役職無し」は、とりあえず当たり障りない“からあげ”や“イカバター“などのつまみをたのみ、添えてあるレモンをやたら丹念に絞るのみ。「新人OL」にいたってはもうニコニコお酌するだけのおネェちゃんでしかありません。・・ありがちな光景ですね。

しかし、考えてください。このシチュエィション、いろんな意味で一番困っているのは実は「課長」さんなんです。会社では上と下に挟まれた中間管理職、こうした酒の席が多いわりに使える経費枠はさほどなし。上の子供は高校受験、それも私立。しかも、せっかく腹を割って話そうと思ってのこの飲み会なのに、まともな意見ひとつも出してきそうにない部下にガッカリ。あとは酔っ払って全額払ってぎゅうぎゅう詰めの電車で帰るのみです。

そんなこんなでお勘定は「25,830円」。ここに『ケタワリカン』という発想があったら・・・。「課長、ケタワリカンでいきましょう」「ケタワリカン?面白いこと考えたねぇ〜キミ〜」「いえいえ、ちょっとコラムで読んだもんで・・」といった感じでそれぞれの支払い額は上から「課長=20,000円」「係長=5,000円」「役職無し=800円」「新人OL=30円」。どうですか、良いバランスでしょう。浮いた5,000円で課長はゆったりタクシー帰宅も可能です。

“自分のケタは自分で払う”というそれぞれの責任感から、役職・年代に関わらず自分の意志を遠慮なく言えるようになり、この4人は飲み会を重ねる毎に活発に意見を交換し、徐々に強い信頼感で結ばれ、いつの日か社内のどの部署もなし得なかった大きなプロジェクトを成功へと導くのです。・・と例えばサラリーマン社会においても極めて発展的なイメージのこの『ケタワリカン』。あなたの職場でも提案してみる価値は充分にあるでしょう。

「世代の違うメンバーで飲むなんてこと無いからなぁ〜」という方、この“ケタワリカン”は簡単にエキサイティングなゲームにもなるんですよ。それが『ジャンケン・ケタワリカン』略してJKWです。お勘定の時にジャンケンでそれぞれが支払う“桁”を決定します。それがどんな飲み会であれ、その最後に『ジャンケン・ケタワリカン』という大きなゲームが待っているわけです。

ここからあとは実際の話。先週末、福岡から高校の同級生「友清」が仕事で久しぶりに東京に来たので、そろそろ在京20年になる同級生「新谷」といっしょに西麻布のえらくカッコイイ店で食事しました。で、お勘定の時にこの『ケタワリカン』を提案。性格上、新谷は拒否するかと思いましたが、飲みつけないシャンパンを飲んでいたせいか「いいばい(いいよ)」と積極的です。金額は「29,100円」。3人ジャンケンの一発目「グー・グー・チョキ」であっさり新谷が負け、「万の桁=20,000円」の支払いが決定。次は私と友清とで、残る「千の桁=9,000円」と「百の桁=100円」の勝負です。2、3回アイコが続いた後、私が負けて「9,000円」支払決定。 まぁ、通常ワリカン的金額なのでダメージはありません。“このことをコラムに書こう”と思いついただけで満足です。で、勝者・友清の支払いは100円。今回はたまたまいい金額で、結果的に新谷が福岡からやってきた友清分をおごったという形に落ち着きましたが、もしこれが1,000円違って「30,100円」だったら、敗者・新谷のダメージは金額的にも精神的にも大違いだったでしょう。ゲームとしてもなかなかスリリングです。

店を出てタクシーを待つ路上、「アンタこれ、おもろかねぇ〜!オレ喰って飲んで100円ばい。むちゃくちゃイイばい、これ」と大きな声の友清とは対照的に、「負けたのはしかたない。全部おごったと思えばそれよりはマシ。ただ、“チョキ”で負けたのがすごく中途半端でイカン。どうせ負けるなら男らしく“グ−”で負けたかった・・」と肩を落とす新谷に意味不明の男気を感じた西麻布の夜でした。

2005/12/02


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