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Friday Column

No.434

『冬の白い恋人』

さぁ、寒くなってきました。1年で最も心躍る、そんな“札幌黒タイツ”の季節到来です。20代の頃は、女性の着衣枚数が少なくなる夏を“ぼくらの季節”と呼んで楽しんでいたものですが、今思えば、あの頃はガキでしたね。オトナになるにつれて、女性の衣服がどんどん厚くなるこれからの季節こそが“ぼくらの季節”だと言い切れます。コート・マフラー・お帽子・耳当てと厚くなればなるほど萌えるのです。そしてそれは、私の大好きな生牡蠣の季節でもあります。生牡蠣退助・生牡蠣潤一・生牡蠣吾郎に、生牡蠣結衣。みんなステキですね。特に最後の方なんかは今すぐレモン絞ってかぶりつきたいものです。

というわけで、今週は生牡蠣の話をしようと思いますが、しようと思うと同時に、過去にしたのではないかと思い返せば、はい、何度か書いてました。が、まぁ、いいじゃないですか。毎年やってくる楽しみな季節なんですから毎年書いても誰からも責められる理由などありませんので書きます。

実家で暮していた時代は、この時期になると家でよくカキフライが出てきました。きっと安価で栄養たっぷりだったのでしょう。が、私これがあまり好きではありませんで。それは単純にジャリッと苦い味の食べものでしたから、こどもの私には、グラタンやハンバーグと比較しても決してうれしいおかずではありませんでした。



オトナになって、それはいつどのくらいオトナになった頃かはハッキリおぼえてませんが、東京だったか札幌だったかで、とにかく“生牡蠣”というものを初めて食べたのです。それはそれは感動的に美味しくてですね、カキフライはただ苦いだけなのに、それが生牡蠣となるとどうしてこんなに美味しいのだろう、とビックラコキーユサンジャック(*)だったものでした。

そしてその後の私は、ワインというこれまた素晴らしい飲み物と出会ってしまったもんですから、その相乗効果と言えば、井上陽水×奥田民生を上回るのではないかというほど素晴らしいものです。

2002年からのパリ時代、この時期になると、フランス北西部のブルターニュ地方から青いジャンパーを着た牡蠣おじさんがやってきて、レストランやビストロの軒先にお店を開きます。今でこそ日本食ブームで寿司や刺身などの生ものを食べるパリジャンは多くいますが、それ以前は、生で食される魚介類は牡蠣だけだったそうです。私もこの時期になると、ことあるごとにレストランやビストロに行って、生牡蠣をペロペロとたべていたものでした。

メニューを開くと冒頭に生牡蠣(les huîtres)があり、「Fines de Claire Nº1~Nº4」「Spéciale Nº1~Nº3」と6〜7項目並んでいます。「Fines de Claire」は身も味もサラッと薄く、「Spéciale」は身厚でミルクたっぷりな味わい。どちらも番号が若いほど身が大きいという表示で、これを6個単位で注文します。私はいつも薄くて小さい「Fines de Claire Nº4」を注文しました。

テーブルの中央に金属の台が置かれ、その上に店先の牡蠣おじさんが手早く開いてクラッシュアイスの上に並べた生牡蠣の銀皿がドンとのせられます。これにレモンを搾ったり、刻んだエシャロット入りのワインビネガーをちょっとかけたりして、ツルッ、ペロッと吸い込み、キリッと辛口の白ワインをチビチビ。これがたまりません。



思えば、私がパリでプルターニュの牡蠣を食べたのは2003年の冬が最後ですから、あれからもう10年もそれを食べてないことになりますかね。

そんなブルターニュの牡蠣は1960年代になんらかのウィルスの大量発生によって一旦絶滅したそうで、その時には宮城県から真牡蠣の稚貝が輸入されたそうで、現在のブルターニュの牡蠣の子孫は宮城県産だということです。でもって、つい最近、2008年にも同じくなんらかのウィルスの大量発生で収穫量が激減し価格が高騰。再び宮城県の真牡蠣が輸入され再生の研究が続いているようですが、今はどんな状態なんでしょうかね。

なにしろ帰国後も私はこの時期になると生牡蠣をうひゃうひゃ食べています。しかも、それをシャンパーニュという世界で最も美味しい飲み物とともにいただくわけですから、その相乗効果の素晴らしさと言えば、剛力彩芽×きゃりーぱみゅぱみゅに匹敵すると断言できます。

では、今年いただいた生牡蠣をいくつか御覧いただきます。



なんとも美しいこのフォルム。東京のお鮨屋さんでいただいたのは、瀬戸内海は播磨灘・赤穂の牡蠣。こんなの出てきちゃったらもうレモンなんか絞ってる場合じゃありませんよ。そのまま、そのまんまペロッ・・・、です。ふ・ふ・ふ。



先々週の山形のレストランでいただいたのは、宮城県は奥松島の牡蠣。松島ではなく奥松島です。この“奥”ってのがいいじゃないですか。そうです、日本女性の美しさ、それは“奥ゆかしさ”なのです。みんなで写真を撮るときも、決して前列には出ない、後ろのほうではにかんでいる、そんな女性が好きでたまらないのです。そう思っているのは私だけではありません。これは全日本男性共通の思いなのです。人の妻を“奥さま”と呼ぶのは、本来そういうことなのです。だからこそ、ゆっくりと見つめて、そっと丁寧に、でも一瞬でペロッといただくのです。はぁ・・・。



東京の和食屋さんでいただいた牡蠣。「どちらですか?」と訊ねると、「三陸です」とだけ答えました。三陸っつったって宮城から青森まで縦に広いですけど、具体的にどことは言わず、「三陸」と言うにとどめる、この、なにか秘めた趣とでもいうんでしょうか。それもまた良いではありませんか。細かいことは聞きません。あなたが好きです。ペロッ・・・、あぁぁ・・・。

どうですか。やはり生でしょう。

こんがり褐色に揚がったカキフライでは決してなく、瑞瑞しく白い生牡蠣。

いや、これは牡蠣に限ったことではありません。それは私の生き方にもまったく同じことが言えます。こんがり小麦色に焼けた真夏のサマーギャルなんかには目もくれず、寒い季節に厚く固くガードされたそれをやっと開くと現れる真っ白の身こそが最も美しいのです。それはこの時期にしか出会うことのできない、冬の白い恋人なのです。

あぁ、次はサロマか厚岸か昆布森か。

欲を言えば、やや小さめで身の厚くない方でお願いします。

2013/11/15

*コキーユサンジャック(Coquille Saint-Jacques)とは、フランス語でホタテ貝です。



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