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Friday Column

No.193

『唯一“危険”があったとすれば』



まずは「ん?」と思わせる写真を一枚貼っておいて、はい、行ってきました、年末ですけど、ベトナム・ホーチミンシティ。今回は妻と母と兄夫婦の5人で、私以外はみな初ベトナムということもあって、ほぼ添乗員的役割でしたが、ええ楽しかったですよ。なんてったってベトナムですから。私自身はもうベトナム5度目のホーチミン4度目ですが、今回は特に新しいチャレンジはなく、安全第一を基本にした3泊4日(帰路機内泊を含む)でしたので、旅行記的なものは特に書きませんが、ひとつたいへんにエキサイティングなシーンがありましたので、そこんとこだけ写真とともに報告しておかねばと思います。

12月28日(日)、二日目の夜。今夜行くべきレストランを兄とそれぞれのガイドブックを見ながら話し合い、街の北方、旅行者としてはちょっとはずれにあるフエ料理店に決定し、ホテルのフロントから予約を入れてもらいました。19:40、ホテルの前からタクシーに乗ります。最近のベトナムは、欧州やアメリカ、オーストラリアなどからのカラダのデカイ観光客も年々増えてきたからでしょうか、6人乗りのワゴンタクシーが、特にホテルの前には多く客待ちしています。そんなワゴンタクシーに乗り込み、レストランの店名と住所を書いた紙を運転手さんに渡すと、ちょうど運転手さんの携帯電話が鳴り、運転手さんは私が手渡した紙を見ながら「ウゴン、ワン、パクタック、ウワンダー(イメージ)」とひととおり会話をしたあと電話を切り、私にむかって「Sorry, my wife, can’t go, sorry」と謝っています。よく意味が分かりませんでしたが、とにかく奥さんと電話で話した結果、そこに今行くことはできない、らしいことはよくわかったので、「OK, OK, タンビエット(さよなら)」と笑いながら車を降りました。ん、もしかしてそのレストラン結構離れた所にあって、かなり時間かかるのかな、とも一瞬思いましたが、地図を見る限りではいくら混んでても片道20分もあれば行くだろうと思える距離です。息子さんの誕生日なのか、それとも結婚記念日なのか、とにかく奥さんと話してダメだっつうんですから、そりゃ仕方ありません。

ってことで、すぐ後ろにいたワゴンタクシーに乗り、15分くらいで到着しました。レストラン『Phu Xuan/フースアン』は、こぢんまりと落ち着いたお店です。一番奥のテーブルに案内されました。“そんなのカンケーねぇ”ばりに眉毛が濃い若い男性従業員は、おっとりした日本語で料理の説明をひとつひとつやや緊張した面持ちでゆっくり丁寧にしてくれました。途中何度も出てくる「シュリム」という単語は、なんらかのベトナム式料理法か調味料かとも思いましたが、よく聞けばそれは「すり身」であることがわかりました。それにしてもたいへんに素晴らしい日本語だったので聞いてみると、このお店は東京にも支店があり、彼は日本に行ったことはありませんが、ホーチミンシティの『さくら日本語学校』で勉強したそうです。

メニューを端から端までじっくりみて、いろいろ質問して話し合って、なんやかんやと注文し、ワインを飲み、さんざん食いました。さぁそろそろベトナムコーヒーでも頼んで締めますか、という頃、店の外ではブヮ〜ン、ブブブブブ、ピッピッピピッピッピーと大量のバイクが走る大騒音と奇声のようなものが鳴り響いています。「ベトナムにも暴走族がおるっちゃねぇ」と兄と話していましたが、店外の暴走音はいつまでもやむことなく、どころかどんどんその規模が拡大しているかのような雰囲気さえありました。

あぁ食った食ったうまかった、とお会計を済ませて表に出ると、店の中で想像していたどころではない、とんでもない数のスーパーカブ系バイクが切れ目なく疾走しています。「うわぁ、これどげんなっとうと」と言いながらもなんとかタクシーをつかまえて乗り込もうとすると、運転手さんは「どこ?」的なことを言っているようなので、『Renaissance Riverside』と地図を見せると、「No, No」と首を振って乗せてくれません。お店の人が出てきて運転手さんを説得するも、ひたすら「No, No」の一点張りです。仕方なくそのタクシーはあきらめて、お店の人が電話でタクシーを呼んでくれました。5分後、到着したタクシーも「おれはやだよ、ってゆうか無理っすよ」的な雰囲気でしたが、お店の人が「いいから、たのむ、乗せて、ね、ね」と交渉してくれて、なんとか乗り込みました。運転手さんは「Traffic, very bad….」と腕時計を見せたりしながら、たぶん「この状況では何十分かかるかわかりませんよ」的なことを言っているようでしたが、こっちとしてはタクシーに乗る以外にホテルに帰る手段はありませんので、「OK, OK」ということでとにかく出発しました。

それにしてもこの状況、まさしくバイクの“波”です。それも中心部に向かえば向かうほどその量は更に増え、車はまったく動けない状況にまで陥りました。運転手さんから聞き取れた単語は「football」のみですが、たぶんなんらかのサッカーの大会でどこかが勝利して、街中が大フィーバーになっているようだということが想像できます。というか、それ以外のことは何もわかりません。タクシーは渋滞を回避すべく交差点の度に方向をかえますが、どっちに曲がってもバイクの波・波・波。さすがのマッパーの私も、今どのあたりをどっちにむいて走っているかすらわからない状況になりました。もうこうなりゃどうしようもないです。あとはホテルに帰って寝るだけだし、これはもう滅多に出会えないであろうこのとんでもない状況を楽しむ以外にありません。

というわけで、ひたすら車外の写真撮影。ベトナムの国旗を振りながら走る2人乗り、いや3人乗りのバイクの大洪水。多くの人は手に鍋とオタマを持って、カンカンカンカンと叩き鳴らしながら奇声を上げて走っています。冒頭の写真は、往生するタクシーの上に乗っかってベトナム国旗を振りまわす上半身裸の若者です。その運転手さんも「もうどうしょうもないっすよ、ケガだけせんでくれよ」という表情です。お巡りさんだってどうしようもありませんから。並走するバイクにカメラを向けると、みな明るく楽しそうに「ワォ〜!」とはしゃぎ、こちらにカメラを向ける若者もいます。とにかくなんかわかんないけどみんな楽しそうです。そんな感じでグングンあがる料金メーターもそのうち気にならなくなり、1時間くらいかかったでしょうか、やっとなんとかホテルにたどり着きました。いやぁぁぁぁぁしかし、とんだ祭りに巻き込まれました。けっこう楽しかったからよかったですけど。というわけで、タクシーから撮った怒濤の写真をどうぞ。


 


 


どうですか、すごいでしょう。すごいどころじゃなかったですけどね。でもねぇ、巻き込まれながらも思ったのは、みんな真面目なそうなヤツばっかりっていうか、みんな正しそうなヤツばっかなんですよ。不良がいない感じ? そんな雰囲気が写真からも見て取れますかね。これだけのたいへんな数のバイクが街中を走り回って交通は完全なマヒ状態のマッパダカにいるというのに、なぜか“暴動”感が全くない、“危険”を一切感じないんです。「みんなよかったねぇ、なんかわかんないけど」とそんな感じで楽しく巻き込まれました。唯一“危険”があったとすれば、ホテルにたどり着いた時の私のボーコーはすでに満タン120%だったことです。それはそれでかなりの危険でしたが、チョクチョー満タンよりはまだマシだったでしょう。「ここんとこがタイトルかよ」というのがこの『金曜コラム』の魅力のひとつでもあります。はい。

で、結局なんの騒ぎだったのかってことなんですが、翌朝“クチトンネル”へ向かうワゴン車で若いベトナム人女性ガイドさんに聞くと、「昨日はサッカーの東南アジア大会がありまして、ベトナムが初めて優勝しましたでしょう。そして、ずっとずっと勝ったことなかったタイに勝ちました。だからみんなうれしかったでしょう。」ということでした。はぁ〜、そういうことでしたか。ふぅ〜ん、よかったです。いやでも、サッカーファンというよりは市民全員が繰り出してたイメージでしたけど。「ガイドさんもバイクで街を走りましたか?」と聞くと、「いいえ、私はもうたいへんと思って、早くに家に帰りましたよ。」ってことでした。あっ、そうか、そうだ、あのレストランに行く時の最初のタクシーの運転手さんの「Sorry, my wife, can’t go, sorry」とは、この祭りを予測した運転手さんの奥さんが「アンタさっさと帰って来ないと、たいへんなことになるわよ」と電話で忠告したのかも知れません。あぁそうだ、きっとそうだ、今、わかった。

日本へ帰る日航便は夜遅くの出発です。もし、昨日帰る予定だったら、どう考えても時間通りには空港に着かなかったでしょう。「昨日、日本行きの飛行機に乗り遅れたお客さんいたでしょう」とガイドさんに聞くと、「はい、乗れなかった人はたくさんいましたと思いますよ。」ね、そうですよね。はぁぁ〜、よかったですよ、一日ずれてて。

5度目の訪問で初めて見たベトナム・ホーチミンシティのとんでもなくアグレッシ部な一面を紹介しました。ふだんはとても静かでソフトで理知的な雰囲気漂う素敵なところですから、みなさん機会があれば是非。ちなみにこの原稿を書きながらその日のベトナムのサッカーに関するニュースを検索したら、このお祭り騒ぎによる交通事故で、ホーチミンシティで少なくとも4人が亡くなってたそうです。うわぁ・・。

2009/01/23



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