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Friday Column

No.292

『星屑の隙間に木村基博 その3』

先々週から引き続き【星屑の隙間に木村基博】の振りかぶり。今週はその最終回、かなり長めです。今週も演奏ワリフリ表を貼り付けておきます。お時間のある方は、コラムN0.290、291からの流れでお読みください。



さて、私と根本要さんとの強い要望で選曲したスキマスイッチの『ムーンライトで行こう』。一緒に演奏したかったのに、なぜ私はそこに参加しなかったのか・・・。結論から言うと“カンジェラ”になるために着替えなければならなかったからです。いや、結論だけを言うと、かなり薄っぺらい感じがいなめなめなめませんが、そうではないのですよ。

大阪城ホールという大きな会場で、『よければ一緒に』をお客さまと一緒に大合唱したい、という気持ちはごく自然に生まれたものですが、総勢14人の大バンド、約8000人のお客さま、という環境をイメージした時に、「いや、ここは敢えてひとりで演るべきではないか」と思ってしまう私はいい意味でヘソマガリです。いや、しかし、自身の弾き語りライブでさえ未だにビビリー・ジョエルな私に、城ホールのど真ん中でたったひとりで弾き語る度胸など果たしてあるものか、いや、それはない。しかし、私にはこれまで23年の活動に於いて、“マチャアキ”“スティーヴ・椀田”“マイケル・弱小”“恵比寿・スレプリー”“ジョンの魂”“原田省吾(ハラショー)”など、私のライブ履歴を語る上ではかなり重要な【ニセゲスト】という独自のパフォーマンスを数多くやってきたではないか。そこにはさほど大きくはないもののひとつの自信めいたものを持てているではないか。そうだ、そうしよう。大阪城ホールで弾き語り・・・、・・・そうだ、うん、“カンジェラ”だ。と決意したのです。

同時に、あくまで質の高い音楽的なエンターテインメントを目指す【ホスキモ】に於いて、それがエンターテインメントである以上“すんごいバカバカしい笑い”も重要不可欠な要素のひとつであると考えるのは私だけかも知れませんが、本気でそう思っていますし、また、この【ホスキモ】に於いてそれをやるべきは、他の誰でもない私である。という使命を強く感じてもいたのです。

ならばアンジェラ・アキさんの言動・挙動を調査、そして御本人許可を、という目的だけではなく、純粋に観たかったからですが、11月11日に東京・NHKホールでの公演を観せていただき、終演後のアンジェラ・アキさんに御挨拶した時に、「実は今度、城ホールのイベントで“カンジェラ”っていう新キャラをやろうと思ってて」と言ってみると、「えぇ、KANさんにやってもらえるなんて、めちゃめちゃ光栄です〜!」と彼女は言いましたが、「でも、怒るかもしんないよ」と言うと、「いいえ、せっかくだったら、私が本気で怒るくらい徹底的にやってください!」と言ってくれましたので、「よし、やるぞ、徹底的に」と意識が高まりました。

スタイリストの藤井さんに具体的なイメージを伝え、原宿で購入したヅラをヘアメイクの冨田くんにカット&カールしてもらい、すべての準備を【ホスキモ】メンバーには見せることなく水面下で整えました。

いやぁぁしかし、これはたいへんなプレッシャーでした。私のそのようなパフォーマンスを期待し、楽しんでくれるお客さまがどのくらいいるのだろうか。そんななかで、ライブ後半に向けてお客さまをググッと盛り上げることができるのか。もし失敗して中途半端なかたちになってしまったとしたら、それまでのイイ感じの流れを“カンジェラ”がぶった切ってしまうことになるのです。そんな最悪の事態になったら、共にリハーサルを積んできた【ホスキモ】のメンバーにも、そしてなによりアンジェラ・アキさんに合わせる顔などなくなってしまいます。そんなプレッシャーに完全包囲されて“カンジェラ”はステージ袖で待機しました。

デベソステージでの『ムーンライトで行こう』が終わり、要さんが「さて、実は、なんと、シークレットゲストが来ています!」とオーディエンスの期待を煽り、スキマや秦くんは「え、マジっすか? 誰ですか?」と予定どおりにスットボケ、要さんは「女性です! メガネをかけています!」と更に期待を煽り、要さんの「この方です〜っ!」というコールで遂に“カンジェラ”はメインステージに登場しました。


カンジェラ登場!
 

さっさと退散

最初の数秒は大歓声に包まれたものの、“カンジェラ”の顔アップがなんたらヴィジョンに映し出されると、デベソステージの8人は「どういうことなんですか、要さん!」「どうせこんなことだろうと思ったよ、帰ろ、帰ろ」とさっさと撤退します。ここから、独り残された“カンジェラ”の独り舞台が繰り広げられます。“コール&レスポンシビリティ”から“時間差深呼吸=WAVE”まで、事前に頭の中だけでイメージしていたすべてをカンジェラはやりきったのです。・・・とは言ったものの、実際には、デベソステージのある今回、自分の演奏と、会場の大スピーカーから出る音との時間差を回避するために、私は初めて“イヤモニ”というものをつけていたので、自分のマイクの音は聴こえているものの、観客の皆さんの反応・盛り上がりがいったいどのくらいなのかは、音では感じ取れず、見た目だけで判断するという状況だったので、やってる最中も正直ずっと不安でしたが、いや、そんなこと関係なくやり切った自分を誉めてあげたいです。



暖かいお客さんのおかげで『よければ一緒に』はうまいこと大合唱に。・・と、そこにオルガンやハイハットの音が徐々に加わってきます。さっきさっさと退散したみんながメインステージに戻って来ていたのです。「みんなが、戻って来た! コラボレーションや!」。“弾き語り→大合唱→感動のコラボレーション”という構成で、カンジェラによる『よければ一緒に』は終わりました。ありがとう、アンジェラ・アキさん。半分以上はあなたのおかげです。


 


舞台が暗転すると、専属ヘヤメイクのシンタくんが、カンジェラのヅラを取って、櫛で髪を整えてくれて、私は私に戻ります。ここの選曲は『まゆみ』か『Happy Time Happy Song』か、いや敢えて『Rock’n Soul in Yellow』かなど、リハーサルに入る寸前まで悩んでいましたが、ここはやはり“大会場対応曲”をやるべきだと『すべての悲しみにさよならするために』に決定しました。


すべての悲しみにさよならするために

私のバンドを基本に、大橋くん・秦くんがサビをがっちりハモリます。そして、Cメロ終わりはデベソ・ピアノの上に登場した根本要さんによるダイナミックなギターソロ。特製の真紅のマフラーが近藤くんの特大扇風機で力強くたなびきます。でもマフラーの中にハリガネ入ってますけど。この華麗なギターソロは要さんの“ソロ”と見せかけて、実はメインステージのセンパイが下フレーズをハモる“ツインリード”だったりもします。そのようなことに気づいてくれる音楽ファンに向けてのこだわりです。そんなツインリード後の要さんはデベソステージから裏通路をダッシュ、曲のエンディングではメインステージの後方中央に再登場し、今度はアドリブのギターソロを弾きまくりました。


愛は勝つ

さぁ、この後はもうイケイケナンバーで一気にピークへと導きます。『愛は勝つ』は私のバンドを基本にスタレビュ6人の分厚いコーラス。間奏のベートーベン“第9”部分には、新たにイメージ・ドイツ語の歌詞をのせました。続けざまに今度はスタレビュ基本で秦くんの『キミ、メグル、ボク』。スピーディでポップなビートが会場全体を飛び跳ねさせます。私と大橋くんのコーラスで秦くんをサポート。シンタくんは矢代さんのキーボード・クレムリンに入り、ウィリッツァー音でプレイ。センパイのリッケンバッカー・12弦も効いてます。この曲サイコー、楽しいです、はい。


キミ、メグル、ボク

音を止めることなく私はピアノに戻り、スキマスイッチ『全力少年』のライブ用イントロへと繋げます。「Wo〜〜、Wo〜〜♪」と大橋くんによるコール&レスポンスでオーディエンスの熱を充分に上げて、デベソステージのシンタくんのピアノで『全力少年』の本イントロに入り、カースケさん・寺田さんによるツインドラムでの全員演奏へと流れます。あとはもう、ステージ全体を走りまくるのみです。この曲にも【ホスキモ】独自のキメアレンジが施されています。大橋くんは“必殺!ステージ落ち”でアリーナを走りまくり、会場は興奮のウツボと化します。後半はデベソステージのシンタくんのピアノソロを秦くんと私とでジャマしまくり、続くギターソロで要さんは“必殺!歯弾き奏法”も披露。いやぁぁぁ、イメージどおり、いやイメージ以上の盛り上がりです。最後はデベソ・ピアノ上からの大橋くんの海老蔵、じゃなくて“海老反りジャンプ”で締め。スキマスイッチのパワー、楽曲のパワーを改めて実感しました。


全力少年

そして本編最終曲はスタレビュの『愛の歌』。終演後の打ち上げの席で要さんは「スキマの“全力”でもう完全にピークを越えてイキきったんだから、オレはね、最後にそぉ〜っとお茶を出す感じなのよ」と言ってましたが、「いえいえいえいえ、お茶を出す人があんな長いフェイクはしない!」と大橋くんにキッパリ返されました。確かに。このイントロでの要さんの熟練フェイクが大阪城ホールを大きなひとつの球体にまとめていくのです。曲中盤のギターソロから戻ってメインボーカルととろうとする要さんを阻止して、大橋くん・私・秦くんで要さんのマイクを取り合いながら歌唱するのは、前日のリハ中に大橋くんから自然に出た演出。私のなかでのベストシーンのひとつです。「ラララ〜ララ〜ララ〜、届け愛の歌〜♪」とステージ全体に広がった演者と観客全員による大合唱で、本編が清々しく終了しました。


愛の歌

ラインナップ後ステージ袖へハケると、そのままデベソに向かって裏通路を移動します。普通に歩いて1分半かかりますから休まず行きますよ、と言っていたにもかかわらず、「ちょっと楽屋戻っていいっすか」と大橋くん。「ダメだよ、行くよ!」と言うのも聞かずに大橋くんは楽屋へダッシュ。戻って来た大橋くんの左腕には、ちっちゃ〜い字で最終オリジナル曲のマイクロカンペが何枚も貼り付けてありました。

歌唱者10人が揃ったところでデベソステージに登場。輪になって『KANのChristmas Song』をアカペラ歌唱します。実は、リハーサル前の曲決め段階で、あまりにスタレビュの負担が大きすぎると感じた私は、やっぱり『KANクリ』はやめて、スタレビュのレパートリーでもあるBilly Joelの『The Longest Time』をやるのはどうか、と提案しましたが、大橋くん・シンタくん・秦くんから「いや、是非“KANクリ”をやりたい」とうれしい反論がありましたのでそうしました。メインを5人で歌い分け、メインを歌わない部分はコーラスを、というややこしい振り分け歌唱に、時間をかけて取り組みました。これもほんとにやりがいがありました。なんせこの曲を生アカペラでやるのは初めてのことでしたから、うれしかったです。そして、なんつったってシンタくんのメインボーカル。第2Aメロ部「ぼくは12時に〜〜」とシンタくんが歌った時のオーディエンスの大反響は、私の予想を大きく超えていました。これも良かったですね。間奏部分ではカースケさん・西嶋さん・センパイ・矢代さんがメインステージでハンドベル&スレイベルで色を添えました。

 

KANのChristmas Song

大きな拍手に包まれながらメインステージに戻り、最後のトークです。「あぁぁ、もう終わっちゃいますよ」。いや、ホントにあと1曲でこのコンサートが終わるんだ、という切な〜い気分になりましたが、しかし、この最終トークはおもしろかったですね。終演後、関係者に「あの最後のトーク、台本でしょ」と聞かれましたが、そうではないのです。もちろん前夜の飲み会で「このパートでは誰と誰を中心にこんな話を」程度の大まかなトーク打ち合わせはしてましたが、「シンタくんウルウル/要さんのシメ/秦くんパーマネタぶり返し/大橋くんのマイクロカンペ/寺田さんのデベソピアノ乗り/タイトル入れ替わり/秦くんのツッコミ」これらの最終トークはすべてホントにその場のアドリブでした。資料用に撮ったDVDを観ても、このコロコロと展開するおもしろさは、トークとは言え、なにか奇跡的なものを感じましたよ。いわゆる“気”が合ってたんでしょうね。


奇跡的なグダグダトーク

そして最終曲は、このイベントのために私が書き下ろした『オリジナル』という【ホスキモ】のオリジナル曲。この曲のみ、なんたらヴィジョンに歌詞スーパーを出しました。大のオトナがみんなでサビをユニゾンするあたりがSMAPみたいで楽しいじゃん、そんな曲を14人全員入り乱れて走り回って演奏。で、最後は“一本締め”。そしてトドメは秦くんによる“銅鑼一撃&テレ笑い”。コレ、良かったですよね〜。こうして1夜限りの【星屑の隙間に木村基博】は楽しく楽しくエンディングを迎えました。


 


 


花道でのフォークダンスのエッセンスを取り入れたラインナップ、ステージ両翼も含めて全員で丁寧にお礼の挨拶をして、長い長い拍手に見送られて私たちはステージを降り、みんなで考えてみんなで練習してみんなで作ってみんなでやりきった【星屑の隙間に木村基博】はその幕を閉じました。



・・・と、ここで終わらないのが私のシツコイところです。ステージ袖に降りた要さん・大橋くん・シンタくん・秦くんと私は、最後の仕事“影アナ”を5人でやりとげ、【星屑の隙間に木村基博】は本当に終了しました。いやぁぁぁ、お疲れさま、心の底から楽しかったです。

小学生時代は野球チームに入ってやってましたが、中学ではテニス部をすぐにやめ、高校では水泳部だったもんですから、チームが一丸となってなにかやる、という経験がほとんどない人生を送ってきた私ですが、今回、48ちゃいにして初めて、“チーム”や“一丸”というイメージのものを実感した気がします。それは、アーティストとしての今後の活動に於いて、いや、それは私自身の人生に於いてたいへんに重要な経験であったと言っても決して大げさではないものです。

スターダスト・レビュー、スキマスイッチ、秦基博くん私という完璧な組み合わせでこのコンサートをやらせてくれたGREENSに感謝。限られた条件、限られた時間の中で、私たちのアイディアをすべて実現させてくれた全スタッフのプロフェッショナリズムに感謝します。そして、可愛い可愛いドリンクレディのSAYAKAちゃん・lisaちゃんもホントにありがとう。

そしてなにより、この【ホスキモ】を観に来ていただいた皆さま、ありがとうございます。この記憶を長く大切に残し、そしておおっぴらに語り継いでください。

余談ですが、打ち上げも楽しかったですよ。これまでの23年の芸能生活で最も楽しかった打ち上げだと言えます。自身のツアーまっぱだかで、翌日・翌々日と公演を控えた秦くんは、お酒をちゃんとセーブして、1次会終わりで名残惜しそうにホテルに帰っていきました。「ミュージシャンとしてあるまじき行為だな」と要さんと言いました。その後もみんなで飲んで喋って歌って笑って、あっという間に朝の5時。それでもまだ帰りなくなかった私と要さんと大橋くんは、24時間営業のラーメン屋にのりこみ、この期におよんで延々2時間のエロトークを繰り広げるうちに外はすっかり明るくなって、やっとホテルに帰ったら7時半でした。ひゃ〜ひゃっひゃっひゃっひゃっ。

3週にわたりお読みいただきありがとうございます。コンサートを御覧いただけなかった皆さまにも、どうにかその内容をお伝えすることができたでしょうか。

さて、そんな私は【弾き語りばったり #13 ~Moonlight Sirinade~】ツアー中です。先週末の静岡(清水)公演を御覧いただいた皆さま、ありがとうございます。私としたことが、これまでで最もカッコワルイところをお見せしてしまいましたが、私はもう忘れましたので、皆さんも忘れてください。

明日明後日は東京2公演、来週は横浜公演です。会場でお会いできることを楽しみにしています。

2010/12/17



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