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Friday Column

No.224

『デモ音源の話 その3 その他の機材と周辺機器』

今週は、Perfumeの『直角二等辺三角形ツアー』を札幌市民ホールで観せていただきました。おもしろかったですよぉ、ええ。ああいうたタイプのライブは初めてでしたが、よかったですねぇ。もう3人の名前も顔も完全に認識のあきら。やっぱなんつたって曲がいいですから、全編ドッチードッチードッチードッチーのテクノサウンドでありながら、それ20曲聴いても飽きないってのは、やはりその楽曲のバリエイションの広さとクオリティの高さでしょう。おそるべし中田ヤスタカ(文章の流れ上敬称略)。でもって、あの振付けも独特で斬新です。歌詞やアレンジに細かくシンクロした振付けで、曲中に同じパターンの繰り替えしがあまりないようです。あれ覚えんのは相当な特殊技能です。“ひとりZOO宣言”で30代を踊り明かした私ですが、「ううむ、オレがパフュームには入るのは無理だな」と観ていて実感じました。少しくやしいので、音楽的に“ひとりPerfume”をやるべく研究に勤しみます。それにしても、「ポリリズム」生で観ると、感動しますよ。

さて、そんなこともありながら先々週からの流れで、私のデモ音源づくり話の続き。今週はその他の機材・周辺機器について書きます。前回前々回のコラムをお読みいただくと、より話がわかりやすいと見せかけて、読む方によってはクタクタになって結局よくわからんかったよ、ということにも充分なりえますので、私のデモ音源づくりのこれまでのあらすじをざっと御説明します。

まず1984年から使い続けている名機【YAMAHA RX-11】でドラムのデータを作成し、これを【Digital Performer 5.0】というシーケンスソフトに取り込んで、それに合わせてベース・ピアノその他の演奏データを【Digital Performer 5.0】上で作成します。うん、平たく言えばこの3行で済んだんですね。では、今週はここから先の説明です。ところで私はどこで作業をしているかと言うと、それは自宅ではなく会社ってゆうか事務所です。事務所の中に、私の録音用機材をセッティングしているスペースがあり、歌やギターは別の階のスタジオに入って録りますが、それ以外はすべて事務所内の私のスペースで作業をします。なぜなら、家にいたらアレンジに煮詰まってちょっと休憩とソファに横になったら、そのまま何時間も寝てしまったりするからです。それに、スタッフとのちょっとしたに打ち合せなんかを、作業の合間にちゃちゃっとやれるという利点もあります。だから私の場合は“自宅デモ”ではなく“事務所デモ”なのです。パーテイションを隔てた隣りでは“たいせい”くんが、本格的な機材をぶりぶり積んでたいへんな量のアレンジをやっています。では、私のシンプルな機材写真を御覧ください。


YAMAHA P-60

まず、ドラム以外のすべての演奏データを作成する時に弾いているのは【YAMAHA P-60】、いわゆるデジタルピアノです。04年の帰国後に事務所置き用に購入したもので、07年のバンドツアー【座ってポン!】では、グランドピアノのボディの中にこれをハメ込んで“ニセピ”として使用しました。ベンドがついてませんが、デモテープなので気にしません。「ってゆうか、ベンドってなによ。ベンドって」と思った方は、9月9日に発売になるLIVE DVD【じゃぁ、スイスの首都は?】を買って、『GO PLAIN』で私が弾いているシンセの左手のレバーに注目してください。それがベンドです。

そして、このグレーのやつが【Roland VS-1680】というハードディスクレコーダー。これに録音します。


Roland VS-1680

その下に身を潜めているのが、いろんな音色がいっぱい入っている音源モジュール【Roland VS-8850】です。左右の発泡スチロールが粋(いき)ですね。枠(わく)じゃないよ。ところで“スチロール”ってどんな綴りだろうと調べてみたら意外にも【styrene】で、発音は“スタイリーン”でした。なんだかかっこいいですねぇ、知らなかった。


粋なスタイリーンに挟まれたRoland VS-8850

さて、ハードディスクレコーダー【Roland VS-1680】です。テープレコーダーの“テープ”が“ハードディスク”になったというだけ、と思っていただいていいでしょう。購入したのはいつだっけなぁ、ちゃんと調べれば分かりますが、アルバム【TIGERSONGWRITER】か【KREMLINMAN】を作ってる頃ですから、97〜8年だと思います。ギターのセンパイ(中野豊さん)に薦められて買い、使い方はいちいちセンパイに電話して教えてもらいました。

この【Roland VS-1680】にはトラックが16あります。「ってゆうか、トラックってなによ、トラックって」と思った方は、陸上競技のトラックを想像してください。例えばカセットテープはテープ面が4つのトラックに分かれていると考えて、A面ステレオで2トラック、裏っ返してB面ステレオで2トラックというわけです。まぁ、テープとは構造が根本的に違いますし、B面に裏っ返しすなんてこんともありませんが、録音するという考え方では同じってことにしときましょう。それでもまだわかんない方は、たくさんの荷物を運ぶ車ではないってことで納得してください。

私の場合の16トラックの割り振りは、ドラム・ピアノで各2トラックの計4トラック、ベースが1トラック、曲によってクリックに1トラック。でもって歌に1トラック、コーラスに2トラックを残すとして、あと6トラックくらいにいろんな音をいれるというわけです。個々のフレーズがキッチリ考えられていて、それらが頭の中で整理できていれば、足りなくて困るということはほとんどありません。最悪足んなくなったらピンポンすりゃいいんですから。「は? ピンポンってなんすか、ピンポンって」と思った方は、ええと・・・、これまためんどくさいんで、ま、卓球だと思ってください、それでいいです。この後この話でてきませんから。とにかく、これ買う前は4トラックのカセットでやってたんですから、16もありゃ充分ってことです。デモ音源づくりで大切なのは、持っている機材のトラック数ではなく、脳の中のトラック数なのです。まぁ、私のタイプの音楽は、ですけど。

で、次は音源モジュール【Roland SC-8850】です。ドラム・ベース・ピアノから弦楽器・管楽器・打楽器・いわゆるシンセ音・効果音など、ありとあらゆる音色がこの中に入ってます。録音する楽器それぞれのイメージに合う音色をチャンネルを分けて選びます。「ってゆうか、チャンネルってなによ、チャンネルって」と思った方は、ううううう、どうしましょう。テレビのチャンネルと元の考え方は同じような気がするんですけど、中途半端にこの説明をすると、「じゃぁ、トラックとチャンネルってのはどう違うのよ、一緒じゃん」とか言われそうだと思うと、なんかほんとにめんどくさくなってきちゃったんで、この際、陸上競技でも卓球でもないテレビっぽいものだと思い込んでください。それでいい。そしてこの【SC-8850】はポートとしての役割もあります。「ポートって?」って言うな! ポートはポート! もうこの先、専門用語の説明はカット!(ひとり逆ギレ)

で、なんの話でしたっけ、ええと、デモ音源づくりの流れをまとめますよ。まず【YAMAHA RX-11】で作ったドラムデータを【Digital Performer 5.0】に取り込んで、【Roland SC-8850】を鳴らしながらその他の演奏データを【DP5】上に作っていき、それらを【Roland VS-1680】に1音色ずつ録音していきます。
で、途中のどこかの段階でまだ歌詞のない歌をラララで録って、コーラス入れて、【VS-1680】でトラックダウンします。これでデモ音源づくりは完了です。

で、今度はそれを車の中で聴いたり、周辺スタッフに聴かせたりするために、CD-Rに焼かなければなりません。ここで登場するのが【Plextor PLEXWRITER 12/10/32S】。これを【VS-1680】につないで、TD済みの曲をCD-Rに焼きます。で、そのCD-Rを高級コンピューターの【iTunes】に取り込んで、スタッフに渡す場合は【iTunes】でCD−Rに焼くというわけです。



この手の録音に詳しい方の中は、「まだ、そんな昔の機材使ってそんなめんどくさいことやってんすか」と思う方もいらっしゃるでしょうけど、いいんですよ。もちろん今や揃えるべきソフトを揃えれば、鍵盤とノート型高級コンピューター1台ですべて作業は完結します。そんなこたぁ知ってまし、インターフェイスだって一応持ってはいます。しかし、そうするとどうでしょう。まだまだ使える【RX-11】も【SC-8850】も【VS-1680】も【PLEXWRITER】も必要なくなるわけです。それは何を意味するのかというと、それはいわゆるひとつの“失業”、しかも同時多発です。機材やソフトなんてのはどんどんどんどん進化し、次々に新しいものが登場します。作業効率を追求して新しいそれらにホイホイ乗り換える度に使える機材が不要になっていき、“失業”を生むのです。それは治安を確実に悪化させ、その状態が激しくなれば、さて、私たちは何をどうすればいいのでしょうか。

意味がわかんなくなってきたので、最後に、多くの皆さんも使うことがあると思われるヘッドフォンの話。ここ2年くらい使っているのは【SONY MDR-Z600】というやや大きめのやつ。長いこと使ってると、この耳パッドのクッション部分がポロポロはがれてきてですね、録音終わって耳のまわりやほっぺたに黒いものがついてるのに気付かぬままカッコつけてコンビニに入ったりすることになるのです。替えよう替えようと思いながらもそういうのってついついのびのびになりますが、今回よく見たら、あららららもうホントにボロボロじゃないですか。ってことでメーカーに電話したら「じゃぁ、新しい耳パッド着払いで送ってあげるから、自分で替えりゃいいじゃん」と言われたので注文したら、すぐ届きました。


ヘッドフォンをよく見たら
 

耳パッドはボロボロで
 

新しいのを取り寄せた

届いた新しい耳パッドを開けてみると、これって、なんかヌーブラっぽいですよねぇ、ニュアンス的に。とそんな気がしたもんですから、張り替える前に、これだけ耳に直接つけたらどんなかんじだろう、とやってみました。ううん、見た目は軽やかでいいんじゃないかと思われますが、音楽らしきものはなにも聴こえませんでした。



2009/08/28



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