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Friday Column

No.187

『SUPERMARKET FANTASY』

12月6日(土)は、日本武道館での『シャ乱Q結成20周年ライブ』にちょろっと出演してきました。見ていただいた方、どのくらいいらっしゃるでしょうか。つんく♂さんと、L⇔Rの黒沢健一さんと一緒にThe Beatlesの「Nowhere Man」を演奏するってことになりまして、「ん? 武道館でNowhere Man? そりゃたいへんだ」ということで、1966年6月30日のビートルズ日本武道館公演でのジョン・レノンとして演奏するべきだ、と迷いなく決定しました。まずはスタイリストさんにビートルズ武道館公演初日の衣裳と酷似したスーツを用意していただき、続いてジョン・レノンが武道館で演奏したものと同じ【Epiphone Casino】を高橋諭一さんに借りに行き、自前のヤング・ジョンのヅラをかぶってステージに立ちました。しゃべりはもちろんすべてジョンのモノマネ英語ですよ、えぇ、ちゃんと通訳立てて。という万全の態勢での「Nowhere Man」。どうだったんでしょうね。武道館全体に大きなクエスチョンマークがいくつも浮かんでましたけど。私としては武道館でこの曲を演奏する以上、このスタイルが音楽家としての礼儀であるわけですが。理解されないんだよなぁ・・。まぁ、いいですか。一応、写真貼っときます。


1966年6月30日、日本武道館楽屋でのジョン・レノンさん

さて、今週の本題です。いやぁ、またもたいへんに素晴らしいアルバムが発売されました。Mr.Childrenの【SUPERMARKET FANTASY】です。『ロックボンソワ』でインタビューすることもあり、発売以前にサンプル盤をいただいて繰り返し聴きましたが、いやはや、なんとも、重厚な作品です。

まずはこのポップでキャッチでリズムがよく、身近っぽいのに意味ありげな魅惑のタイトルはなんなのか、という興味が自然に湧きます。桜井和寿くんの談を要約すると、アルバムタイトルのアイディアがない状態で、デザイナーさんに収録曲を聴いてもらってデザインを発注し、プレゼンされたジャケ写デザイン15案には、それぞれになんらかのイメージタイトルがついていて、そのうちのひとつがこの【SUPERMARKET FANTASY】で、このデザインでこのタイトル、すごく良いんじゃないか、ということで決定したそうです。

という話を聞くと「えぇぇ、そんなんでタイトル決めちゃうの?」と思う方も少なからずいらっしゃると思いますが、私は「あぁそう、それはよかったですね」という感想です。だってねぇ、コレだ!というアルバムタイトルってなかなか思いつくもんじゃないんですよ。楽曲については、タイトル案がなかったとしても歌詞を書き進むうちになんとなく見えてきたりするもんですが、アルバムタイトルはねぇ、楽曲とはまた別のところにありますから。思いつかない、アイディアがない、ってこともアーティストとしてはごく自然に納得できます。

コンサートツアータイトルだって、リハーサルをやる前に思いつくわけないってのが私の考え方なもんですから、私のツアータイトルは94年以降テキトー思いつきでつけて、それとは関係なく中身は中身でばっちり作りますよ、というスタンスでやってきましたが、ラッキーなことに、ツアータイトルを見て、それによってそのライブを観に行くか否かを考える、ってことは世間的にあまりなさそうなので、現段階ではまぁそれでよしとしています。がしかし、アルバムタイトルはそういうわけにはいきません。タイトル=商品名ですから、そりゃぁ重要です。アルバムタイトルを見て買うか買うまいか迷うことも普通にあるでしょうし、アルバムタイトルが聞き手にとっての収録曲の聴き方・解釈にも影響をおよぼすということも充分あり得ますからね。そういう意味も含めて、このタイトル【SUPERMARKET FANTASY】はポップでキャッチでリズムがよく、身近っぽいのに意味ありげな魅惑のタイトルだと思えます。それがデザイナーさんからヴィジュアルとともに提案されたなんてのは、とても楽しい仕事のあり方のひとつでしょう。

料理が好きということもあってスーパーマーケットでの買い物が日々の楽しみで、東京にいる日はほぼ毎日スーパーマーケットに行っては、カートを押しながら食材を吟味するとみせかけておいて実は美しい女性客を見つけてはイマジネーション・フルになっている私にとっては、もう「なんでわかっちゃったの、桜井さん」というくらいズボシの、できればそのまま自分のアルバムにつけたいタイトルだったりもします。

【SUPERMARKET FANTASY】は、そんな私のイマジネーションを遥かに越えた素晴らしい内容です。私なりの特筆楽曲いくつかについて勝手に書かせていただきます。

01. 終末のコンフィデンスソング
アメリカンロックスピリットに満ちたスリリングなサビの展開がかっちょいいオープニングナンバー。「音の構成に引っぱられて書いた」という歌詞は、聴き手の意識の中の視線の行き先までをも操作誘導する、たいへんに秀逸な楽曲。

02. HANABI
A-B-Aまでのメロディ構成で、シンプルな楽曲として充分成立していると思えますが、しかしその後にパブリックイメージ上のMr.Childrenを強く感じさせるサビが来る。しかもそのサビの中に「もう一回 もう一回」とインプレッシヴなリフレインで高楼部を構築し、そして最後にはその「もう一回 もう一回」がサビ中とは異なるコード進行に乗ってぐぁ〜と上方に巻き上がるようにエンディングに向かう、たいへんに手の込んだ完成度の高い作品。

04. 声
桜井くんによると「歌になる前の、・・・歌の、・・・・歌」。つまりは、作りたい、歌いたい、という内側から湧き出る“初期衝動”をそのまま作品化したという楽曲。なのでサビに歌詞がない。極めてプリマティヴで音楽的な作品。

07. 口がすべって
シンプルなアレンジだったとしてもアルバム収録曲として確固たる存在感を保てる楽曲だと思えますが、今回のMr.Childrenはそれでは終わらせないようです。2コーラス目あたりから4人編成のストリングスが鳴り、最終的には大編成の管弦交響へと展開します。「さりげなくとか、そういうのじゃなく、全力で“聴いてもらいたいんだ”という思いを、音に出したいなと思ってて」というこのアルバム製作全体に通じる基本姿勢をはっきりと解釈し、納得できることでしょう。「流れ星が〜〜」からの抜けるメロディも気持ち良い。

08. 水上バス
なにげなく美しく、そしてとてつもなく悲しい、悲しすぎです。20代の桜井くんに戻ったようなヤングなボーカルが、その悲しさを逆に更に深いものに感じさせます。

13. GIFT
極めてパーソナルなテーマを、メロディ・アレンジとともにここまで壮大に仕上げる創作力、各Aメロ3行目終わりのチェックポイントで「GIFT」「時ふと」「聞くと」と確実に韻を踏むあたりはもう職人技と言えるでしょう。「光を感じれるよ」からのストリングスの旋律に導かれるような最後の大サビは、真に感動ものです。

とまぁ、書けばきりがないほど、いやぁ、たいへんに重厚なアルバムです。Mr.Childrenはかれこれデビュー16年半。それはそれはいろんな時期があったと思われますが、どうでしょう。私はすべてのアルバムを聴いていますが、前作のアルバム【HOME】、そして今作と、なんかわかんないけどこの期に及んで作品のクオリティがググヮグヮグヮガガガ〜っと更に上がった気がしてなりません。この高質の作品群を聴く多くの若いミュージシャンが、そこに憧れ、そこを目指して新しい作品を生み出すことによって、日本の音楽的底辺はぐいぐいと上がっていくのですよ。テレビやラジオで流れるMr.Childrenを聴いて、ミスチルをわかったような気分になっている方にこそ、お聴きいただきたいアルバムです。


SUPERMARKET FANTASY / Mr.Children

これをお読みのみなさんは、ところでKANさん、ここんとこ人のアルバムばっかりほめちぎってますけど、あなたはどうなんですか。【ばったり7ライブアルバム】もいいですけど、新しいのは作ってんでしょうか。・・・ってことですよね。あぁ、そうです、おっしゃるとおりですよ。そういう意味では、今年は刺激の多い年でしたよ。1曲参加した平井堅さんのアルバム【FAKIN’ POP】も素晴らしかったですし、TRICERATOPSのアルバム【MADE IN LOVE】は、「よし、曲作るぞ」という音楽家としての基本的衝動を明るく沸きたたせてくれました。そしてMr.Childrenの【SUPERMARKET FANTASY】を聴いて、「うぅぅむ、もっともっと追求し、煮詰めなければ・・」と煮詰まっているところです。なんだ、やっぱり煮詰まってんじゃん、ってことですけどね。どうあれ向かってますから、行くべき方向に。

とりあえず明日は『丸ビル』で弾き語りです。

2008/12/12

※12月20日(土)24時からのSTVラジオ『KANのロックボンソワ』では、桜井和寿くんのインタビューをたっぷりお届けします。
http://www.stv.ne.jp/radio/kan



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