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Friday Column

No.129

『カタコトの秋』



毎週通いの札幌STVで番組の準備をするためにとってもらう応接室の大きな窓からの写真です。素晴らしい作業環境です。それにしてもいい季節になって来ましたね、ホントに。何がいいって、街を歩く女性がマフラーをし始めるのがとてもいいですね。若い頃は、気温の上昇とともに女性の着衣枚数が減り、生肌の露出面積が大きくなる時期=つまり“夏”を楽しい季節ととらえ、5月の連休明けから9月24日までを“ぼくらの季節”と勝手に呼んでよろこんでいたものですが、今思えばあれはいわゆるひとつのコドモ趣味だったというか、30代後半位からは、女性はきっちり服を着ているほうが魅力的なのだと確信するようになりました。そういう意味で今の私にとっては、だんだん寒くなってマフラーなんかし始める今この時期こそが“ぼくらの季節”到来のピリオッドであり、それを“我々の季節”と呼んだほうがよりオトナっぽいなぁと考えるのです。

まぁとにかく、秋です。“芸術の秋”“食欲の秋”“読書の秋”なんて昔からよく聞きますが、みなさんはどうでしょうか。私の場合は、なかなかそうは見られないんですがレッキとした芸術家なもんですから、秋に限らず毎日が芸術活動です。“食欲”も秋にかかわらずネンガラネンジュウありますから、“食欲の秋”というよりは“食欲人生”を送ってます。これがなくなったら悲しいだろうなぁ。逆に“読書”は私の人生に全く無関係です。自慢じゃないですけど本1冊完読したことないですし、活字を長いこと読むってのができませんでね、頭痛くなっちゃうか、眠くなっちゃうかですね。これまでの人生、読んだ活字よりも書いた活字のほうが圧倒的に多いのは明らかです。ということで私の場合は秋だからといって特にどうだということはありません。ただ、来週あたり札幌ではそろそろ“札幌黒タイツ”が見れるかなぁ、と楽しみにしているのは事実です。

そんな私も先週末ばかりは“文化の秋”でした。金曜日は、リビング・レジェンド的バイオリニスト【イヴリー・ギトリス】さんのコンサートを墨田トリフォニーホールに観に行きました。もう巨匠ですから、技術とかなんとかそんなことを考えるレベルとは無縁の存在というか、長い年月を経たブルゴーニュのピノ・ノワールのように美しく枯れた音色は、フランスの田舎町にどこまでも続く枯葉の並木道のように、秋を感じさせてくれました。土曜日は池袋シアターグリーンで、野沢トオルくん率いる【G−ホイズ】の最終公演『パラサイト・ラフ』、オモロかったです。これでG−ホイズは解散しましたが、うぅん、もったいないっちゃもったいないですけど、でもまた再結成公演とか毎年やっても別にいいんだしね。そんな野沢トオルくんは新劇団の結成準備を既に始めています。日曜日は【スターダスト・レビュー】のコンサートツアー『31』を東京厚生年金会館で観せていただきました。いやぁ、すごいですね、毎回思いますけど、演奏カッコイイですし。大人げなくふざけたとしても、“ふざけ”を深掘りせず、最後はキチッと締めますからね、さすがです。このツアーはこの後も全国各地でたいへんな公演数ありますから、是非観に行ってください。・・と全く異なる3種の芸術を連続鑑賞した文化的な先週末でした。そしてそんな私にとっての先週、最も文化的だったのは25日(木)、イタリア・フィレンツェ小留学時代の語学学校の先生姉妹とお嬢さん方を、私のカタコトのイタリア語だけで古都・鎌倉を案内するというスペチャーレな1日でした。(←先週のクイズの答えです)

私のフィレンツェ小留学は94年10月と96年1月に2週間ずつの計4週間、語学学校【Centro Ponte Vecchio/チェントロ・ポンテ・ヴェッキオ】に通いイタリア語を学びました。その後、01年2月にフィレンツェを訪れた時にちらっと挨拶程度に学校に顔を出しましたが、パリ時代の03年11月に再びフィレンツェを訪れた時には学校はそこにはなく、街にある他の学校を何軒か尋ねてまわったところ「その学校はChianti(キャンティ)に移りましたよ」と情報を得て、ネット検索してキャンティの学校のサイトを探し当てて以降は時々メール交換をしていました。で今回、26・27日に日本イタリア文化会館で行われる“イタリア留学フェア”に招かれて来日するってことで、「10月下旬に東京に行くので、是非お会いしたい」とメールがあり、25日午前11時、宿泊先の麻布に迎えに行きました。

やって来たのは語学学校の先生・Paola(パオラ)と、どっちがお姉さんか結局わかんなかったんですけどとにかくPaolaの姉妹で学校の事務をやっていたSimonetta(シモネッタ)。そしてPaolaのお嬢さんMaria-Giulia(マリアジュリア)ちゃん10歳と、Gioconda(ジョコンダ)ちゃん6歳の4人。01年2月以来、6年半ぶりに再会したPaolaもSimonettaも見た目の変りはなく、どうやら私もぜんぜん変わってないと映るっているようです。ビルだらけの東京に予想どおりにビックラこいているようだったので、私の車で古都・鎌倉を案内することにしました。

さっきも書きましたが、この日の会話はすべてイタリア語です。【世界カタコト協会】主宰の私はもちろん正々堂々のカタコトですが、相手はイタリア語を話せない多くの外国人がやってくる語学学校の先生ですから、私のカタコトのイタリア語をどうにか理解する術は持っていると思いますし、2人のお嬢さん方も変なイタリア語をしゃべる外国人にはどうやら慣れっこのようです。この後書かれる会話すべては、“こう言ったつもり”と“たぶんそういってるんだと思う”というあくまで私の解釈です。

麻布から首都高に乗って湾岸通って横横で朝比奈というルートが時間的には最短ですが、高速道路からの景色は単調でつまらないってことで、麻布から上野毛の第3京浜の入口までは一般道を通りました。知る人ぞ知る裏道キングの私は、大きな通りばかりでなく、あえて商店街や細い路地なんかを通って景色のバリエーションをひろげました。Simonettaは11年ぶり2度目の東京、Paolaは初めての東京なもんですから、人と車の多さに、あらゆるところにあるコインパーキングに、ビックリしたり感心したり。そんなこともふくめて車内でず〜っとイタリア語で会話してるんですが、いやぁ、これは危ないですね、ハッキリ言って。だって、頭の中でフル回転で脳内辞書を引いて会話しながらの運転ですから、携帯でしゃべりながら運転してるなんかよりよっぽど危ないですよ。「運転中にカタコトの外国語を話してはならない」なんて交通法は今んとこたぶんないので法的にはだいじょぶでしょうけど。ま、そんな感じで上野毛から第3京浜(高速)に乗って横浜新道・横横経由で朝比奈で降りて古都・鎌倉に無事到着しました。


古都・鎌倉に到着

お昼も過ぎたし、まずはなんか食べましょうってことで、東京に来てから昨日までの3日間は何を食べたとか、お嬢さん方は何が食べたいのとか、いろいろインタビューして、結局、“何を食べても初めての経験、とにかく知らないものを食べてみるということが重要なので日本食であればなんでもいい”ということになり、じゃぁってことで、鶴岡八幡宮の前のふつ〜のおそば屋さんに入ることにしました。お店の前にあるロウでできた日本ならではの料理サンプルを見ながら、ざるそばから親子丼まで12品目ぐらいでしたか、辞書を引き引きどんな料理かをすべて説明します。イタリア人は食べることに興味が深い人が多いのでこの過程は重要なのでしょう。1品1品私の説明を真剣に聞きながら、その都度Paolaが私のカタコトイタリア語をお嬢さん方に通訳しながら、みんなでケース内のサンプルを睨みつけます。

ちなみに辞書引きながらの説明例をいくつかあげますと:
■そば:la pasta di grano saraceno, sottile e lunga come i fedellini…
  (そば粉を使った細くて長いパスタで、ちょうどフェデリーニみたいなぁ...)
■うどん:la pasta di farina, lunga e unpo’ piu grossa di Soba…
  (小麦粉のパスタでぇ、長くてぇ、そばよりは少し太くてぇ...)
■だし:il brodo del pezzo di tonno secco e l’alga secco…
  (鰹節とか乾燥した海藻からとるスープでぇ...)
■天ぷらそば:Soba in brodo caldo con fritto di gambero…
  (あったかいつゆに入ったそばで、海老の天ぷらがついてぇ...)
■親子丼:pezzetti di pollo cotta in brood con cipolla e uovo, messo sul riso…
  (鶏肉の細切れを玉ねぎと卵と一緒につゆで煮て、ご飯の上にぃ...)

それぞれ心に決めたってことで、いざ店に入り座敷に上がりました。PaolaとMaria-Giuliaは“天ぷらそば”、Simonettaは“天とじそば”、6歳のGiocondaは“親子丼”、うぅんチャレンジャーです。ならば私は“肉うどん”です。お箸の使い方は知っていても、実際にあったかいおそばを食べるのは上級者向けのテクニックかもしれません。それよりも“めちゃくちゃ熱い”っことに驚いています。時間ともにおそばはつゆを吸い、どんどん量が増してくるように感じられるでしょう、食べても食べても減りません。そういう意味ではざるそば系をすすめたほうが良かったかもしれません。私はオトナですから「おいしいですか?」なんて野暮なことは聞きません。「どうですか?」と聞くと、Paolaは「La prima esperienza/初めての経験」と笑います。お嬢さん方2人も決して旨いとは思わないでしょうけど、楽しそうだったんでだいじょぶでしょう。気がつきゃSimonettaはつゆまできれいに完食してました。


左から、Paola、Maria-Giulia、Gioconda、Simonetta

食後は、鶴岡八幡宮をぷらぷら歩いて、だんかづらや小町通りのお店なんかを見て歩いて、修学旅行シーズンだったり七五三だったりで平日なのに結構なにぎわいです。その後は再び車に乗って噂の“大仏さま”を見に行きました。小さい頃に祖母に連れて来たもらった以外ここに来た記憶はありませんので、私にとっては40年ぶりくらいの鎌倉の大仏さまかもしれません。デカイです。デカイデカイと思っていたほどのデカさではなかったですがやはりデカいです。Paolaは「私が写真で見たいくつかのブッダは、悲しい表情のものが多かったけど、ここのブッダはとても優しい表情をしているわ」と、あくまで芸術的視点で大仏を見ているようです。Simonettaは「まず正面から見て、そして左側に移動して見るとお辞儀をしているように見える」ってことで、そうしてみたら、ほう、たしかにそう見える気がしたりしておもしろかったです。歴史のこと聞かれなくてよかったです。食べ物は得意ですけど、日本史は専門外ですから。大仏さまの右側から中に入れるみたいだったので「入りましょう」というと、Paolaは「ノ、ノ、中はダメ、中はダメよ」と極端に拒否します。カトリック信者としてでしょうか、それとも暗闇恐怖症なんでしょうか、興味を持ったGiocondaの手を引いて「中はダメよ、真っ暗よ、ダメったらダメよ」と言って断じて入りませんでした。なんだったんでしょうか。


イタリア語では“Budda Grande/ブッダ・グランデ”と言うんだよ。

そんなこんなで6時間、頭の中は大忙しでしたが行動的にはのんびりぷらぷら楽しい再会の午後、【世界カタコト協会】としてもたいへんに意義のある1日でした。イタリア語は日本人にとって最も勉強しやすい外国語だと以前から思っていますが、この日改めてそう思いました。外国語を勉強する場合、それが何語であれ“文法の壁”と“発音の壁”の2つの壁が初期段階からず〜っとあります。しかし、日本人がイタリア語を勉強する場合はその“発音の壁”が無いに等しいんです。中学生になって英語を学ぶ前に小学校高学年で“ローマ字”勉強しましたね。イタリア語の発音は基本的にその“ローマ字読み”なわけですから、カタカナ発音でもこれがコロッと通じちゃうんですね、これは楽しいです。たいへんに発音が難しい北京語や悲しくなっちゃうフランス語なんかとは比べものにならないとってもとっても楽しい外国語です。例えば「天ぷらそば:Soba in brodo caldo con fritto di gambero」を声に出して読んでみて下さい。「ソバ・インブロードカルド・コン・フリットディガンベロ」、ハイ、充分通じてます。じゃ「親子丼:Pezzetti di pollo cotta in brodo con cipolla e uovo, messo sul riso」は、「ペツェッティディポロ・コッタインブロード・コンチポラエウォーヴォ・メッソスルリーゾ」、ハイ、完璧です。どちらか1品でも憶えておいて、見た目でイタリア人だと確信できる外国人にあるとき街で出くわしたら出会いがしらに言い放ってみて下さい、通じますから。どう思われるかは別としてですけど。

4人にとっての10日間の東京はどんなところだったんでしょう。昨日あたりイタリアに戻った頃でしょう。PaolaとSimonettaは、トスカーナ州キャンティ地方の小さな村の古い家で、イタリア語・トスカーナ料理を楽しみながら学ぶ滞在型の小さな学校を経営しているようです。「家は10軒・人口は33人、ワインとオリーヴしかない小さな村よ」と言ってました。人間的なんだろうなぁ。興味をお持ちになった方はウェブサイトを覗いてみて下さい。

【Toscana Mia】 www.welcometuscany.com

2007/11/02



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