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Friday Column

No.055

『インディヴィデュアル・プライム・タイム  Individual Prime Time』

いやぁ〜最近ホントにテレビを見なくなりました。
90年代には「私〜、テレビ見ないヒトなんでぇ〜」なんてのをちょっとステイタスっぽく言う女の子がよくいたような気がしますし、それに対して「ボクっていっつもテレビ見てるサルなんでぇ〜」とか意味もなく返してたような気もします。あれって、“テレビを見ない”ということがちょっと教養あるっぽい感じだったってことなんでしょうね。ということはテレビを見ることイコール教養がない=つまりバカっぽいという感覚だったわけですよ。最近の街の感覚はそのへんどうなんでしょうね。

テレビを見なくなったという意味ではなんだか教養系アーティストの私ですが、だからといって全く見てないわけではありませんで、家にいてやることなきゃテレビつけますよ。ただ、コンピューターがありゃなんでもできてしまうここ最近の仕事環境の中では、家にいてやることがないということがなかなかないわけですから、結果的にテレビをつける時間が以前に比べて極端に少なくなった、というのはコンピューターをお使いの皆さんは共感できるところでしょう。

日本全国の人々がどのくらいどのようにテレビをみているかを数字で表す視聴率。その調べ方も今と昔じゃかなり違っていて、今みたいに24時間常に瞬間視聴率がわかるシステムなどなかった時代は、無作為に選出した一般視聴家庭にアンケート用紙を配布して、その回答集計から視聴率を算出していたものでした。それも、最も多くの一般家庭でテレビが見られているであろうと予測された夜19時から〜22時の3時間に限って調査していた時代もあったそうで、広告料を払う側も、この時間帯のどの局どの番組にCMを打つかという競争をしていたわけです。この19時〜22時という時間帯をテレビ業界では「ゴールデン・タイム」と呼んでいました(和製英語ですけど)。

ところが今はもうビデオリサーチの最新システムでテレビの視聴率なんて常時コンマ2桁まで全わかりです。その数字から最も多くの一般家庭でテレビが見られているであろうとされる時間帯は、曜日・地域その他の条件によって19時台だったり23時近辺だったりというバラツキがあり、またテレビ受像機の在り方自体も時代とともにかわってきたわけですから、かつての「ゴールデン・タイム」という考え方はなくなり、条件によって変化するという前提ではあるものの現状とくに多くの人がテレビを見ているという数字が出ている時間帯=「プライム・タイム」というフレキシブルな考え方になったわけです(これは英語)。

で、話戻って最近テレビを見なくなった私ですが、とかなんとか言いながらどうしても見たい番組はいくつかあり、かならずテレビをつける曜日・時間はほぼ決まっています。この時間がいわゆる『インディヴィデュアル・プライム・タイム』=略して【IPT】です。

ここ1年程の私の【IPT】は週2回、「日曜日の22:59からの30分・日本テレビ」と、「月曜日23:00〜00:15までのNHK教育テレビ」。はい、そうです。前者は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』、後者は『中国語会話』『フランス語会話』『イタリア語会話』の語学系3連発。この【IPT】を教養系とするか否かは解釈にもよりますが、バランスとしては完璧ですよ、私テキには。

ところでこの【IPT】という用語を知っている人は現在のテレビ業界でもまずいません。そりゃそうです、つい昨日私が思いついた新作用語だからです。でもね、世の中にあるどんな言葉だって、最初に誰かが作り出して使いはじめたわけで、その最初の人がどこの誰かなんてことは別にどうだっていいことですからね。そう考えると自作の新語を普及させることは時間はかかりますが予想されるほど困難ではありません。事実、私はこれまでにも多くの新語をあみ出し、世に送り出しています。皆さんが何となく使っている語彙の中にも、私があみ出したものが最低でもひとつはあるはずです。その辺を語りだすとちょっと長くなりますんで別の機会にゆっくり書くとして、このような新語を使用する場合の鉄則だけお話ししておきますと、1.さもずっと前から世の中に普通にある用語のように会話の中に自然に紛れ込ませる。2.もし意味を聞かれても説明は最小限に押さえてサラッと流し、3.その言葉の意味を知らない側に“自分は現代社会についていけていないんじゃないか”という不安感と緊迫感を与える。このあたりが基本です。

この『IPT/インディヴィデュアル・プライム・タイム』の意味を今一度確認しますと、「週のうちで必ずテレビを見ている時間帯=大好きな番組が放送される時間帯」つまりは誰にも邪魔されたくない、電話もとりたくない自分だけの絶対視聴時間のことです。一般的な用例としては「じゃぁ、例の件、明日の夜お電話しますので、その時打ち合わせましょう」に対して「明日の夜ですか、あぁ、すみません、明日の夜はちょうどIPTに入ってしまうんで、明後日でよろしいですか?」とこんな感じ。この流れで「え? 今おっしゃったIPTっていったい何ですか?」と正面から返してくる人はまずいないと思って間違いありません。

なんだかオレには関係ねぇ話だなぁ、と思ってらっしゃる方が多い雰囲気が伝わってきますが、そうでもないですよ。もうすぐ「FIFA ワールドカッペ ドイツ大会」が始まっちゃうでしょう。さぁ、全国サッカーファンの皆さん、この新語【IPT】をさりげなく使いこなして、勝負を決めるシュートの瞬間を確実にリアルタイムでお楽しみください。レッツ、キックオ〜フ!(なんだそれ)

2006/06/02


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