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Friday Column

No.045

『完コピ魂』

今回はコピーの話。オリジナル音源のコードやフレーズを変えることなく忠実に再現するコピー演奏。それも楽譜を見ず、好きな楽曲のレコードやテープやCDを何度も繰り返しかけながら耳でその音階や和声を聴き取り、同様の演奏をするのが“耳コピ”。ロックポップス系の作曲家・演奏家にとっては常識的かつ必須の技術です。

キーボード奏者の場合は、私を含めてクラシックピアノのお稽古から入ってロックポップス系に流れてきたパターンが多く、“耳コピ”のための音感はなんとなく身についていたりするのですが、ギター・ベース・ドラムなどの演奏者のほとんどは、専門的な器楽教育は受けぬまま楽器を持ち、好きな音楽を聴きまくり“耳コピ”演奏するところからそのキャリアが始まっているのではないかと思います。そう考えるとロックミュージシャンってすごいでしょう。

1975年頃、ビートルズの曲をまねしてギターで歌うようになったのが私のロックキャリアの起点。その後コピーバンド『ザ・ミートルズ』を結成するあたりから、より本物に近い感じイメージにこだわるようになり、真剣な“耳コピ”を繰り返しては演奏をテープに録音し、その曲数もどんどん増えていきました。当時の『ザ・ミートルズ』4人の中に楽譜は存在せず、基準はすべてレコード。「こんどの日曜、録音しようや」「曲、なんばすると?」「アイ・フィール・ファインでよかろう」「コーラスはあんたが上、おまえ下ね」とそんな感じの会話だけでそれぞれがレコードを反復して聴き、数日後、楽器を持って家に集まると、いまいち聴き取れなかった部分や、ちょっと違ったコード解釈などをお互い修正しあって録音。と、今思えば、70年代後半の九州・福岡の中学生にしてはかなり高度なことを何も考えずにやってたような気がします。今そのテープを聴いてみると、コピーとは言っても、歌も演奏も九州の中学生ですから、本物のビートルズとは距離がありすぎるんですが、しかしその「気持ち」「勢い」は充分伝わります。

高校生になって同じ水泳部の野村が所持していたビリー・ジョエルのアルバム『52nd Street』を借りて聴いて興奮してコピーしようと思いましたが、やや複雑なコードにジャズっぽいピアノフレーズなど、ビートルズのコピーでは経験しなかった難問に連続遭遇。A面4曲目のイントロで“耳コピ”を断念し、ピアノスコアを買いに行ったのはちょっと悔しい思い出です。で、その楽譜を見てみると、ばっちりコピーしたつもりたった「Honesty」も「My Life」も、原曲とのズレがいくつかあり高校生ながらに軽く凹んだものでした。

この翌年あたりからオリジナル曲を作りはじめ、最初は3コードのロックンロールばかりでしたが、徐々に“ビリージョエルみたいな曲”を作ることにトライします。「Just The Way You Are」を目指して79年に作った「Tender Eys」などは、その未熟さがほほえましくもはじゅかちぃ〜作品です。しかし、当時芽生えた「あぁ、こんな曲つくりてぇ〜」みたいな発想から、目指す楽曲のイメージをコピーする“イメコピ”、またそのアーティストの精神(spirit)をコピーする“スピコピ”は、現在でも私の作品作りの軸になっています。

コラム「N0.043」に書いたスピッツの「チェリー」は、“耳コピ”をすることはほとんどなくなったデビュー以来ひさしぶりに、イントロからワンコ−ラスを“耳コピ”して再構築しました。同じ箇所を何度も何度も繰り返し聴く作業が懐かく楽しかったです。

2003年からのパリでの1年半は、26年ぶりにクラシックピアノを基礎から習い直しました。“クラシック”というものは、何百年も前に作られた音楽が楽譜に書かれた音符を変えることなく演奏されつづけてこそ“クラシック”なわけですから、窮極のコピー文化だと言えるでしょう。また、どの演奏者も同じ音符が書かれた楽曲を演奏する中で、演奏者としての独自の感性・個性を表現するわけですから、なんだかすごい世界です。

イメージ的にはクラシックとは対極に位置する感がある“ジャズ”ですが、聞けばやはり多くの人はコピーから入るそうなんですね。好きな曲、好きな演奏家のレコードを何度も聴いてそのフレーズを“耳コピ”して模倣演奏し、そんな作業を繰り返していくうちに自分なりのフレージングなどが発生してきてオリジナリティを形成するのでしょうが、当然のことながらそこにはコピーした演奏家のフレージング・精神が擦り込まれているわけです。

うぅん、コピーとは音楽を創り出す原点的な作業なんだ、ということをこれを書きながら再確認しました。

そんな“コピー”の最高峰にある作業が“完コピ”です。これはコードやフレーズをコピーするだけではなく、その音色、ニュアンス、タイミングにまでこだわって完全にコピーするわけですから、ホントに好きでないとできないスゴイ作業です。そんな“完コピ”を我らがセンパイギタリスト・中野豊さんがやっているサイト『完コピ魂』ってのがあり、センパイによって完コピ復元されたロックの名曲のギターソロなどの音源を“着うた”ダウンロードできるというんですからロックファンに限らず携帯ファンも必アクです。センパイによる完全コピ・レクチャー「完コピへの道」なんてのも読めます。是非、どうぞ。


2006/03/24


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